3-2
そのあと、ヒルに一室に案内されて、今に至るわけだ。
「ほらな、大丈夫だっただろ。」
「う、うん。でも今度からは気をつけた方がいいと思うよ。
あの人見たいにいい人ばかりじゃないと思うし。」
珍しくレクスが真面目なことを言っている。
「むっ。何かボクのことバカにしてる?」
俺の考えていることが何となくわかったらしい。
ドアがノックされる音がする。
「おーい。ロガ君ご飯の時間だよ。食堂においで。」
ヒルが夕食の時間を告げに来たのだ。
「うん、今行きます。」
食堂には建物には見合わない料理が並んでいる。俺は心配になってしまう。
「ヒルさん、大丈夫?俺本当に一文も払わなくて?」
「ちょっと奮発しちゃった。心配しなくても大丈夫だよ。
これでも稼いでるから。まあ、あんまり説得力ないかもしれないけど。」
まあ、ヒルさんがそういうなら大丈夫なのだろう。
何から何までしてもらって申し訳ない。
このお返しに明日はとっておきの話をお土産に帰って来なければ。
この人にあの話をしても大丈夫だろうと思って思い切って聞いてみる。
「ねえ、ヒルさん。俺この話に載ってる5つのダンジョンに挑もうとしているんだ。それで場所知らない?」
俺は、あの物語の本をヒルに見せて言う。
襲る襲るヒルさんの方を見ると口をあんぐり開けていた。ああ、失敗したか。
この人もあいつらと同じかと思った時、ヒルの表情が変わった。
その表情は輝いていた。
「本当かい?いやーこれは驚いた。それに俺はついているな。
このダンジョンに挑もうとしている子を捕まえたんだから。」
俺は不躾なことを聞いてしまう。
「馬鹿にしないの?」
「馬鹿にする?なんで?これは男の夢、ロマンさ。誰だって挑みたくなるよ。あー。でもごめん。具体的な場所は知らないや。
ここら辺の山だってのは聞いたことあるけど。力になれなくてごめんね。」
俺は安心するとともに俺と同じような人がいたと嬉しくなる。
まあ、場所を知らなかったのは残念だったけど。
「ううん。大丈夫。自分で見つけるから。」
「いや、僕の方でも調べてみるよ。
もしかしたら知っている人がいるかもしれないしね。」
「だ、大丈夫だよ。」
「ううん。力にならせてくれ、な?」
一瞬迷ったが、この人になら頼ってもいいかなと思ってしまう。
「じゃあ、お願いします。」
「おう、任された。忙しくなるな。」
なんだか、体がポカポカする。おかしいな。
それに顔が勝手に動いてしまう。
こんな風になったのは何時振りだろう?
いつの間にかレクスが頭の上に乗っている。
「良かったね。ロガ。」
俺は食事を終え、部屋に戻る。その時かすかにこんな声が聞こえてきた。
「ふふふっ。楽しくなってきたな。」