3-1 怪しい男
空が赤く色づいた頃、ようやく町に着くことができた。
「はあ、はあ。やっと着いたぁ。」
「お疲れ様。ロガ。」
こんなに遅くなったのはこいつのせいだというのに、呑気にジャーキーを頬張っている。
ボカ ボト
「あー。ボクのジャーキーが。何するんだよ。」
「レクスお前のせいで、こんなに疲れてんだよ。
呑気にジャーキー食いやがって。お前が蜂の巣に不用意に近づくからこんな目にあったんだ。」
そうレクスは蜂の巣に近づきあろうことかその巣を突いたのだ。
呑気に”なにこれ?”とかいいながら。案の定蜂たちは怒って追いかけてきた。
理解できなかったが、レクスではなく俺の方に全部襲い掛かってきたことだ。
なぜだ?なぜなんだ?一瞬考えてしまい固まってしまった。
だが、近づいてくる羽音に危険を感じ、全速力で駆けた。
日が暮れ出した頃、俺はひらめいた。”燃やせばいいじゃん”、と。
そして魔法で蜂たちを燃やし、事なきを得た。
えっ⁉気付くのが遅いって⁉
うるせー。こっちは必死だったんだよ。それゆえの疲労困憊状態である。
「てへへっ。」
レクスは悪びれることなく、可愛いこぶっている。
追撃しようと思ったがそんな体力はなかった。それより早く宿屋を探さなくては。
町の入り口にでかでかと
”温泉の町、アエトスへようこそ‼”
と看板が立っていた。
どうやら宿屋を探すのに時間はかからなそうだ。
宿屋は温泉の町というだけあって宿屋は沢山あった。
ただ、他の問題が発生していた。
「た、足りない・・・だと⁉」
そう、お金が足りないのだ。所持金と宿屋代の金額が一桁違う。
これは宿屋に泊まるのは諦めて野宿にするか。まあ、いつもならそっちでもいいんだけど、
今日はさすがにベッドの上で休みたかった。仕方ないか。
そんなことを考えていると誰かに声を掛けられた。
「おーい。そこの君。宿屋探しているのかい。よかったら家においでよ。」
声の方に振り返ると、胡散臭そうな男がいた。
ヒョロヒョロしていて少し突いたら倒れそうな体をしていた。
よく見ると男の体にヤモリみたいなものが這っていた。
うん。これは関わらないに限るな。
「あっ。ちょっ、ちょっと待って。タダ、タダでいいから、ね。」
勝手に耳がピクピク動き、足が勝手に泊まっていた。
「はあ、よかった。泊まってくれた。僕はヒル・インパールっていうんだ。
ほらあそこの宿屋をやっているんだ。どうだい、泊まっていくかい?」
ヒルが指さした先に、いい意味で素朴な建物があった。
一瞬断ろうかとも思ったが、雨風をしのげるだけいいかと思い泊まることにした。
「・・・お願いします。」
「はいよ。一名様ご案内~‼」
ヒルは嬉しそうな声でそう言った。それに大の大人がスキップしている。
「ねえ、ロガ。大丈夫かな?ボク怪しいと思うんだけど。」
「うーん。大丈夫じゃないか?それに襲われても何とかなりそうだし。」
そういうとレクスは口を大きく開けたまま動かなくなった。
そうこうしているうちに宿屋に着く。
「ねえ、お兄さん。本当にお金払わなくていいんだよね?」
「ん?ああ。あっ、でもその代わり・・・」
「ほらロガ、言ったじゃないか。逃げようよ~。」