2-1 旅立ち
俺は家に帰ってきた。薄暗い家へ。
「ただいま。」
「おかえり。」
声が後ろから聞こえるが気にしない。いつものことだ。
自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がる。
「はあ、やっと帰って来れた。疲れたなぁ」
「ロガ、早く準備しなくていいの?」
「わかってるよ。」
俺は必要なものをバックに入れる。入れる物はあらかじめ準備している。
「これとこれを入れてっと。ん⁉何だこれ。」
そこには袋パンパンに詰まったジャーキーがあった。
俺はそれをバックには入れず、机に置き直した。
「これはいらないな。」
「ああ、なんで。それは必要なものだよ。」
「必要ないだろ。誰が食べるんだよ、こんなに。」
「必要だよ。ボクの大好物なんだ。うううっ。」
目を潤ませてこっちを見てくる。ダメだ。甘やかしてはいけない。
それにこいつは何も食べなくても平気なはずだ。なくても大丈夫だろう。
「・・・わかった。わかったから。」
俺はジャーキーをバックに詰め込んだ。いや、泣き落としされたわけじゃないぞ。
これがあれば、レクスがうるさい時にジャーキーをやれば大人しくなると思ってのことだ。
断じて可哀そうと思ってではない。
「ほらっ。レクス。」
俺は袋に入っているジャーキーを一個空中に放る。
「っっ。」
レクスは目を輝かせてジャーキーに飛びつく。嬉しそうに頬張っている。
ほらな。大人しくなっただろう。
それにしてもこんな見た目をしてオヤジみたいな趣味をしている。
まあ、犬としてみたら普通なのかもしれないが。たまに見える歯が野生を感じさせた。
レクスを見ているとこっちもお腹が空いてきた。
荷物の詰め込みも大体済んだしご飯の仕度をしに台所に向かう。
冷蔵庫の中もほとんど空になっている。
「これで何作れるかな。」
俺はご飯を食べ終え、風呂にも入り終えた。そしてベッドに入り込む。
ここで寝るのも当分ないと思うと感慨深いものがある。
「お休み。ロガ」
「ああ、お休みレクス。」
早く寝なくちゃいけないと思っても、ダンジョンに挑めることを思うと興奮して全然寝付けない。
それでも、必死に寝ようとして目蓋を閉じる。徐々に徐々に意識が遠のいていく。
「ほら、ロガ早く早く。」
なぜか俺よりもレクスの方がはしゃいでいた。
「わかってるよ。ちょっと待て。」
俺は荷物の最終確認をして、レクスを追い玄関に向かおうとする。
「おっと、これを忘れちゃダメだよな。」
唯一の手掛かり。これがなくちゃ見つけることができない。
それを手に取りバックに詰め込む。
玄関に着き、俺はレクスと一緒に一歩踏み出す。
パンパンに詰まったバックを背に今旅立つ。
「行ってきます。」