8話
あともう少しで担任が来て入学式の入場の説明等があるはずの時間。
周りはボソボソとした喋り声がチラホラとするだけで静まり返っていた、その理由が全ての女子が一人の人間に視線を向け熱心に見ているからだ。
その視線を向けられているのは......
どーも。
赤城真司と申します。
凄い視線を感じてて落ち着かないんだが......
何故か分からないがうちのクラスに入ってくる女子は俺を見つけた瞬間に目を見開いて手に持っている鞄を落とすか、よっし!って言いながらガッツポーズするかの二つだ。
たぶん後者は元々男子がいるってことに気づいている人で前者は知らなかった人だろう。
ボソボソと喋っているのは恐らく中学校が同じだったとかの知り合い同士なのだろう。
ただ、こちらをチラチラと見ながら話しているので恐らく話題は俺なのだろう。
つまり漏れなく女子は全員が俺を見ているのだ。
そんなの落ち着けるわけが無い。
俺だって一応男なので女子から見られるのは嫌ではないがそれとこれとは違う。
全く、これから先が心配で心配で仕方が無いわ。
ガラガラ
「皆さんおはようございま......す」
あ、先生来た。
......けどなんかこっちめっちゃ見てきて固まってるんだけど。
「男子が登校してる!!?」
えぇ!?そこに驚く!?
しばらーく目が合っていたが先生が頬を染めて視線を外し教卓へ。
「えー、今年度A組の担任をします、響 萌香と言います。1年間よろしくね!」
なんか、俺一人をずっと見ながら言ってくるな......
身長が小さくホワホワしたオーラを感じるのでドジっ娘属性を感じるし。
「はい!では入学式をするので出席番号順に廊下に2列で並んでくださーい」
フム、俺は1番前か。
廊下に出て先生が立っている前に立つ。
「よし!じゃあ体育館に行くので着いてきてくださいねー!」
体育館前まで移動するとA組の後ろに他のクラスが着く、たぶんB組?だろう。
「ここから、入場しますのでしっかりしてくださいね!あと入学式の時に名前が呼ばれるので大きな声で反応してください」
あー、それは俺も高校の時にやったなぁ。
あん時は初日に遅刻して入学式が始まった途中くらいで窓から侵入して名前呼ばれた時にそこから返事したっけ?
まぁ、後で怒られたんだけどな。
特にそこが2階?みたいな所だったから名前呼ばれた後、席に移動するために飛び降りたんだけどそれが一番怒られたわ。
「はーい、行きますよぉ〜」
何か中から音楽が流れてきたので中に入る。
やはり入学式、親は皆カメラを構えていて我が子を収めようと必死だ。
パシャッパシャパシャパシャッ
んー、なんか俺にすごい向けられてるような気がするんだよなぁ。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
なんか連写してる人いない!!?
と、とりあえず席に着いたな......
「それではΑ組座ってください。次はB組の入場です......」
ふぅ、これで暫く落ち着けるな。
本当に男子って貴重なのかね、というかあれ盗撮に入らないのか?
まぁ、別に減るものじゃないからいいのだが。
はふぅ、とため息をついていると隣の人がプルプルと震えていることに気がついた。
どうしたんだろう?
そう思って見てみると顔が真っ赤になっていた。
風邪か!!?
大丈夫なのだろうか......
肘でつんつんとして声をかけようとしたのだが、
こちらを見てくる時ブリキの人形みたいに小刻みにこちらを見てきた。
「な、なぁ体調大丈夫か?顔が真っ赤だぞ、風邪か?辛いなら一度休んだ方が......」
「いいいいいいいえ、だだだだだ大丈夫ですです」
本当に大丈夫なのかこの子?
「そそそその、だだだだだ男性の近くにににに、は、初めてで......」
そっか、男って存在がって事なのかな?
「はい、深呼吸して?」
「すー、はー、すー、はー」
「大丈夫落ち着けばいいんだよ、ほら女の子の格好してるから男って思わなければいいんだよ」
「それは、その、無理かなと」
おっ、冷静に判断できるようになったか、大丈夫だな
「ははは、落ち着けたでしょ?」
「はい、ありがとうございます」
「顔が赤かったから熱あるのかと思ったよ」
「ははは、心配かけてすみません」
ほんとにびっくりした、心配したわ。
「俺は赤城真司、よろしくね」
「あ、はい、私は暁莉央です、よろしくお願いします」
微笑んで前を向く、どうやら全クラスが入場したようだからな。
「国歌斉唱、皆さんお立ち下さい」
体育館内の全員が立ち上がる。
〜〜〜♪
あっ(察し)
そう、そこで気づいた。
国歌が俺の知っているものと違うということに。
くっっ......歌詞がわからなければ口パクをすることが出来ない......
どうする?どうすればいい......
考えに考えた挙句、そうか、口を開けてパクパクしてればいい、という暴挙に出た。
国歌も終わり着席すると暁さんが話しかけてきた。
「国歌にあんな口を開けて真面目に歌うとか凄いね、それに声も高いし、周りの女の子と一緒の高さだったよ?」
違う、違うんだ暁さん......
俺は国歌を知らなかったから口をパクパクしてただけなんだ......
だからその女の子の声は周りの声なんだぞ......
「あはは、ありがとう」
流石に本音を言うほどの勇気はなかった......
だって男の子だもん!女の子にはいい顔しときたいもの......
「続いて入学許可宣言です」
「A組、赤城真司」
え?あっ!名前!
「はい!!!」
返事して立ち上がる
「男?」
「男子がいる!」
「しかもAってことは頭がいいってこと?」
なんか周りがザワザワしてるんだけど
「暁莉央」
「はい!!」
ザワザワしているのを放置でどんどんと名前を呼んでいく。
「〜以上234名を県立千桜高等学校第86期生として入学することを認めます」
長かったなぁ。
そのあとは校長先生の言葉、祝電、在校生の言葉と続き新入生の言葉が来た。
そう、首席が喋らないといけないあれだ。
「続いて新入生代表の言葉です、A組赤城真司さん」
「はい!!」
大きな声で返事して背を正して壇上へと上る。
後ろから暁さんの
「赤城君って首席だったんだ......」
という声が聞こえた。
演台の前に立ち、前を見る。
そこには自分へと、自分だけへと目線が向けられておりその全てが女性のものとかなり緊張する状況であった。
ふぅ、すげぇプレッシャー、だけど......
「暖かい春の日差しに包まれ、私たち234名は千桜高校の1年生として入学式を迎えることが出来ました。
本日は私たちのために立派な入学式を行っていただきありがとうございました。
初めての登校に緊張していた中、校舎へと続く咲き誇る桜の木は私達を歓迎しているようでした。
これからの高校生活が長いようで短い三年間の中で、時に迷うことや辛いこと、様々なことがあるかもしれませんが、友と協力し助け合いながら乗り越えていきたいと思います。
何事にも積極的に取り組み、勉強を始め様々なことに努力していきます。
校長先生をはじめ、先生方、先輩方、そして来賓の皆様、本日はありがとうございました。
私達新入生はお互いに協力し、時には競い合って、お互いに高めあえる関係になります。
もし、私達の答えが間違っている時は、先生方、先輩方、そして保護者の皆様方、どうか力を貸してください。
暖かいご指導よろしくお願いします。
千桜高校の生徒として誇りを持ち、責任ある行動をとれるようにするため、自らを向上させていきます。
第86期生代表 赤城真司」
一歩下がり頭を下げ自分の席へと戻る。
精一杯生きるって決めてるからな。
気合と根性で大体のことは乗り越えられる。
自分の席に戻ると暁さんが話しかけてきた。
「あ、赤城君って首席だったんだね」
「真司でいいよ、まぁ、一応努力はしてたから」
前世で
「じゃ、じゃあ私も莉央でいいよ、し、真司くん」
「ん、分かった」
「努力かぁ、できる人ってカッコいいよね」
純粋に褒められた俺は少し恥ずかしくて目を逸らしたのであった。
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