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55話


「まずはどこに行くんだ?」


ショッピングモールに着いた俺たちは入ってすぐの広場みたいなピロティみたいな場所で立ち止まっていた。


「そうだな、まずはウチの服屋に行こうと思うのだがどうだ?男性用の服も取り揃えていたはずだ」


男性......用?


「確か北ブロックの2階にあると聞いたな、行こうか」

「お、おう」


男性用とかいう危険を察知したような気がしないでもないが、うん、気にしない方が良いよな。


あれ、おかしいな、確か俺って男なのに男物の服に危険性を感じるなんて......


この世界に来てかなり頭の痛い思いをしている案件が過ぎるがこのままだと置いてかれてしまうので小走りで追いかける。


「そういえばなのだが真司、男物の服があるからと思って決めたのだが男物の服は持っているのか?」


1度俺に視線を向け全身を見てからそう聞いてきた。


「えーと......持ってないな」


一瞬男物しかなくね?と思ったがこの世界では逆だと気づいた。

というか、頭に一瞬過ぎる時点で未だにこの世界に馴染めてないってことがわかるよなぁ。


まぁ、一生馴染めないような気がするけど......


「ふむ、そうか......失敗したか?いや、いつも女の格好をしている真司の男の服を着ているのがみれる?」

「な、何を............」


な、何だ?

何か良くない流れを感じるんだが......


に、逃げるなら今?

何かしら本能が危険を知らせてきている。

とりあえずお手洗いでも何でもいいからここから離脱を図るべきか?


「なぁ「よし!行くぞ真司!」」


顔を真っ赤にしながら結衣は俺の言葉に被せつつそう言って俺の手を握ってグイグイ引っ張ってきた。

この世界で女性自ら接触を図られたことがなく、何より男に対して免疫が無い人を多く見てきていたからこそ俺は呆気に取られ、為すがまま店へと連行されていった。


ハッと我に返ったのは既に店に到着してからだった。


「いらっしゃ、お嬢様!?」

「あ、今回は客としてきてるから普通に接客してくれれば構わないぞ」

「わ、分かりま............???」


迎えてくれた店員さんの反応はもちろんのこと、自分が働いている店の上の上の上の人と言っても過言ではない人がきたのだから驚くのも無理もない、だからこそ結衣が言葉に出して気にするなと言ったのだが、彼女は別のことに目が向いた。


その視線に気づいた結衣はその視線の先に目を向け、そしてそこから視線を上げ俺のことを見、もう一度『自ら繋いだ』手を見て。


「ふにゃぁぁ!!!!??」


簡単に言えば弾けた。


凄い勢いで繋がれた手は凄い勢いで離され結衣は壁まで全力で後退りした。

さらに言えば先程よりも顔を赤くしオーバーヒートしている。


顔を赤くしつつも俺の手を繋いできて驚いたし顔を赤くしつつも繋げるくらいには男に対して慣れてきたのかと思ったんだけど。

もしかして顔を赤くしていたのは俺がこの世界で言う男物の服を着ているのを想像して赤くしていて手を繋いできたのはただテンションが上がったからなのかもしれない。


壁へと退避した結衣は少しずつ移動し始めていたので結衣に近付こうと1歩踏み出すと走って更衣室へと駆け込んでしまった。


えーと......


どうしようかと店員さんの方を見ると店員さんは唖然とした顔で更衣室の方を見て固まっていた。


ふむ......


「えっ、どうすんのコレ」


この一言しか出てこないぞ。

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