33話
一緒に来た皆と共に自己紹介も終わりある程度の練習等の予定を聞いたらその日の練習は解散となった。
うちの高校の野球部では全員が行う練習と、ポジションごとに別れて行う練習があるとの事でそれぞれのポジション適正や、希望等を聞きながら練習を次回から行うとの事。
少なくとも莉央は捕手を行うだろうなぁ、とは思っているのだが。
「皆はポジションどこがいいの?」
「え〜?そうですねぇ、中堅手ですかね〜?」
「私は二塁手ね」
「私は遊撃手にするっす!」
「私は」
「捕手っすよね?」
「いや、そうだけど言わせてよ......」
なるほどね、というか経験者なのかな?やりたいところってよりは言い切ってる感じが。
「もしかして、莉央は置いといて、三人とも経験者なの?」
「あー、私たちは大体のスポーツは家の関係でやってるっすからね、一応経験者ではあるっすよ」
oh......さすが貴族様、強制的なのかもしれんが、大体のことはこなせるのだろうなぁ。
「風花はマネージャーをやるんだったっけ?」
「うん、ボクはそうする予定、もしかしたら試合にも出るかもだから一応選手として部には入るけど実質マネージャーだね」
あー、選手登録とかの関係でってことなのかな?
というかそこまで響監督と話つけてるって本気なんだなぁ。
「そういう真司くんはどうするの?」
「あー、どうしようかなぁ」
正直野手でも投手でもどちらでも行けるんだよなぁ、全ポジションできるし......
「............ねぇ、真司くん」
「ん?どうしたんだ?」
「もし良ければ、私とバッテリーを組んで欲しい、私は真司くんの本気の球を受け止めたい、本気を感じたい」
真剣なトーンで莉央は言う。
「もちろん、毎試合先発だったりフルで投げれないのは分かる、投手として投げない時はきっと実力があれば野手としても出ると思う、だけど野手専門ではなくて二刀流でやって欲しい」
目を見ながら話を聞く、だが俺は気づいていた、莉央の目の奥には光が点滅しているかのような、昔はあった光が見えているような、消えてしまいそうなような。
そのような色が見える。
一体どういうことなのだろうか。
分からないが、きっと莉央が俺にこだわる何かがあるのかもしれない。
それに二刀流ってのはありかもなぁとは思っていたのだ。
ただまぁ、練習はキツイだろうけど。
「構わないけど、理由を聞いてもいいか?」
すると一瞬暗い表情を出したがすぐに隠す。
だが俺がそのことを見逃すわけが無い。
「それは......その......」
「いや、いい、話したくなったらで、だけど一つだけ約束して欲しい」
話がコロコロと変わっているからだろうか、莉央は戸惑いつつも頷いてくれた。
「絶対に俺の球を取ってくれ、絶対に諦めないでくれ、共に隣に立って戦って欲しい、それが約束できるなら俺は投手をやろうと思う」
きっとこの言葉の意味を理解してくれる人はいないだろう。
そもそも話が繋がっているようで繋がっていないのだ。
だけど何故だろうか。
莉央は驚き、困惑し、同時に嬉しくも感じ、共有できたかのような顔をしているのだ。
それは、俺の見間違いなのか、それとも言い淀んだ何かの理由があるのかもしれない。
それは俺には分からないし今は分かる必要がないだろう。
「分かった......任せて、任せてよ!絶対に私は離さないから!」
ということで俺は二刀流をすることに決まったのだ。
尚、話に取り残された残りの四人は
『え、何?この将来を誓い合ったかのような告白みたいなものは』
と思ったそうな。
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