21話
「どうして............」
膝から崩れ落ちた先輩はそうボソッと呟いた。
それは、今までの覚悟、努力を自分で否定したからだと俺は思う。
そんな何も残らないような人に負ける訳がない。
「響先生を含めて全員に謝れよ?」
「........................」
先輩は何も言わない、いや、言えない。
これじゃ埒が明かないと思った俺は帰ることにする。
この場に俺がいても先輩は動かないだろう。
「莉央、俺は帰る」
「へ?そうなの?」
莉央はチラッと先輩と部員の先輩方を見て頷く。
ある程度何に謝れと言っているのは予測が、ついているのだろうか?
「結衣ちゃん!咲ちゃん!凛ちゃん!帰ろー!」
「別に莉央達は残ってもいいんだぞ?」
「んー?」
チラッと長門先輩を見て
「少なくとも私は、前を向けない人が部長の部活に興味はありません」
ピクッ
長門先輩は少し反応したが動きはない。
結衣達はどうやら向こうにいる先輩たちに挨拶してからこちらに来たようだ。
「それじゃあ帰るっす!」
「真司くん駅まで一緒だよね?一緒に帰ろ」
「ん?莉央は電車通学なのか、いいぞ」
「え〜、莉央一緒帰るの〜?」
「いいなぁ」
え、いやいや、貴女方お迎え来てますよね?
「それなら車での送り迎えを辞めてもらわないとじゃん」
「そうっすけどー」
「あ、じゃあ今度私が家まで送るよ、そしたら一緒に帰れるでしょ?」
え、俺送られて帰るの?
「あ、それいいわね〜、じゃあそういうことで」
え、どういうことで?
ま、いいか。
その後校門で3人と別れて莉央と一緒に帰っている。
周りにウチの学生はいない。
まぁ、俺らが出てきたのが部活が終わるよりも前だけど放課後帰宅部の帰るのが遅い組よりも遅い時間だからだろう。
「そういえば真司くんって何で今日喧嘩してたの?」
「え?あぁー」
言ってもいいのだろうか?
んー、まぁ、いいかな?
起きた事と俺が思ったこと、相手はどう思っていたのかは分からないけどっていう話をした。
「あぁ、そういうことがあったんだね、だから部長さんは放心状態になったんだ」
やっと疑問が解消できたよと笑って言ってくる。
「あれ?それじゃあ野球部に入るの?」
「いや、正直迷ってる、部長があのままなら俺は入る気は無いかな」
「そうなんだー、私も部長さんが変わって真司くんが入るなら野球部にしようかな」
まぁ、長門先輩がどうするかだよな。
あの人が変わらないならついていってる先輩たちが辛い思いをするだろうし。
「ていうか3球ともど真ん中直球には驚いたよぉ、最後の1球以外本気で投げてないし」
「あはは、リードを無視してごめんね?」
「いや、構わないよ?さっきの話を聞いたからなんでそうしたのか分かったし」
まぁ、あん時は頭にきてたというかなんというか。
「というか、他の人のために怒るってすごい事だし男の子が女の子のためにって絶対にありえないよね」
「どういうことだ?」
「真司くんは優しいねってこと」
ニコッと微笑んできながら言われたのがちょっと照れくさくなってしまって、プイっと顔を逸らしてありがとうと呟いた。
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