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18話


「響先生......」

「響先生は何故ここに?」


いきなり現れた先生に驚いて質問をすると。


「私が呼んだのだ。響先生はこの野球部の顧問で私たちが、私たちだけで野球を始めた頃からの顧問だ」


なるほどね、つまり、今まで状況をしっかり把握している先生ということだな。


「赤城くん、君は、男の君は、周りが女の子の中で体格の不利があるのをどうする?」


あぁ、この世の中のことを踏まえてということか、実際俺の体もこの世界と一緒のはずだからな。

まぁ、ありがたいことに筋力は前世と一緒だが。


「不利を覆すほどの努力をしてはどうでしょうか?」

「では、努力で不利を覆したとしてやっと同じ土俵に立てただけですよ?」

「ならその何倍も努力しましょう」

「ですが必ず壁は来ます、努力したところで性別の違いという壁が、人間には限界があります、どのように超えるのでしょう、女しかいない世界に弱い男が飛び込んだところで弾かれておしまいです、それでも貴方は飛び込むのですか?」


それは......前世で聞いたことがある。

女性のトップアスリートがよく言うやつだ、性別の壁は越えられないって。

体の育ち方が違うのだ、それはまぁ、限界があるのかもしれない、壁はあるのかもしれない。

けどあえて言わせて貰おう。


「越えられない壁は無いです、壁にぶつかったということは壁の目の前までは来ているのです、それを越えようという気持ちがあれば越えられます」

「だが、それは」

「では俺は!」


長門先輩が口を出そうとしていたがあえて、被せる。

恐らく、否定的な言葉だろうから、不可能だ、とかなんだと。


「俺は、前例になりましょう、今までどの男も出来なかったそれを、長門先輩、甲子園のその地を踏みしめた男はいますか?」

「確かマネージャーとして」

「違います、選手として、です」

「それは無い。性別として入ってはいけない、ということは無いが入れるに至る人物が居なかった」


そうか。この世界の甲子園球場は性別を問わないか。


「なるほど。では俺は甲子園を目指します。先輩方と肩を並べて甲子園球場のその地に立ちます。それが俺の覚悟です」


それこそ、彼女たちが甲子園を目指しているそれと何ら変わりはない。

つまり俺の覚悟を否定するなら自分達を否定していることになる。


「確かに、その覚悟は私たちと並ぶ同じ覚悟だ。だが」

「1打席」

「............ッ!!?」


自分でも驚く程低い声が出た。

それもそうだ、俺の覚悟も、彼女たち本人たちの覚悟も否定するような言葉を発したのだ。

特に本人たちの覚悟を一番上に立つ者が否定したのだ。


実に、実に不愉快だ。


そんなに、覚悟を、実力を疑うなら、やるだけのことをやるしかない。


「そうね〜、赤城くんが言うように一打席勝負しなさい、長門ちゃん」


顧問としても思うことがあるのだろう。

生徒としての俺の覚悟以上に、自分が顧問として持っている部活の部長が自分たちの部活を否定したのだから。


「ふっ、いいだろう、貴様ポジションは?」

「ハァ、いい加減名前聞けばいいのに、ポジション?全ポジションだ」


長門先輩が俺の事を舐めている目で見てきた。


確かに変なことを言っている実感はある。


だが俺は元々前世でサッカーと野球をやっていたが、野球の監督の方針として、全ポジション出来るようにする根性野球の教え方だったのだ。

二塁手ができるなら内野手全てが、内野手ができるなら捕手も外野手も出来る、捕手ができるなら投手の気持ちが分かるのだから投手も出来る。


普通ではない、正直言って一生理解できない。


だがおかげで俺は全ポジションできるようになった。俺のチームは全ポジション出来るやつと出来ない奴で別れてはいたが。


「長門先輩、アンタは?」

「アンタ?言葉遣いに気をつけろ、私は右翼手だ」

「へー、なら俺は投手でいいか、捕手は俺が決めていいか?」


何を言ってるんだ?という顔で見てくる。

まぁ、それはそうだろう。

普通に考えれば二年の捕手をやってる人にやってもらった方がいいだろうから。

だが、アテはある。


「ふん、構わん」

「俺が勝ったら野球部に入るのを認めろよ」


正直、敬語を使うほどの余裕が無いほどに頭にきているのだ。


「あぁ、だが私が勝ったら金輪際野球部に近づかないでもらおうか」


長門先輩が、先輩のロッカーからバットを取りだし(たぶん、今日のメニューで使うことは無かったから持っていってないのだろう)グラウンドに行ってしまった。

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