17話
先輩はすれ違った知り合いに何かを伝えてそのまま歩いていくのでついて行く。
着いた場所は、多分部室かな?
部室棟の前まで来た。
そこのグラウンド側手前から四番目の場所に野球部の文字、そこに入る。
「そこに座ってくれて構わん」
「はい、では失礼します」
先輩が先に腰を下ろし、座ってくれて構わないと勧めてくれたので俺も座る。
「貴様は恐らく見学しに来てくれた子達の付き添いだったのだろうが、次から来るのは止めてくれないか?私達は至って真面目に練習しているのだ、それの邪魔をされては困る」
「失礼ですが、俺は付き添いでも邪魔をしに来たわけでもありません、俺は俺の意思で野球部に入ろうとして来たんです」
彼女たちが至って真面目に練習しているのは見ていてわかる。
上下関係もしっかりしていて、先程渋々ながら行動していた彼女たちも、納得以前に自らそうすべきだと行動していた。
体の動かし方を見ても基礎はしっかりしているように見えた。
しかし俺は野球部に入ろうと見学しに来たのであって愚弄しに来た訳ではない。
だが先輩はその話を聞いてもなお、目を細める。
「なら尚更だ、私達は本気でめざしているんだ、甲子園を」
甲子園......か、そうか、女性が多くなったこの世界は女性が入れるようになったのか、となるともしかしたら男は入れなくなってるのか?
だがまぁ、それを調べるのは今ではない。
「なら俺も行きます、ついて行きます、甲子園まで」
なるべく真摯に本気だと伝わるように先輩の目を見る。
一瞬驚いたように目を見開くが。
「その覚悟がどの程度のものなのかが私には理解出来ん」
すぐに切り返してきた。
それはこっちのセリフなんだがな。
若干イラッとしてしまった。
先輩はそのことを見抜いたようで俺の目を見据える。
「なら、言っておこうか。
私は千桜高校野球部部長、二年長門 美希だ。
元々この高校はそれなりの強豪で常々県ベスト4に入るくらいの強さであった。
それこそ、甲子園を狙えるくらいな。」
二年!!?
部長なんだよな......
それに強豪?
確かこの世界は筋肉の付き方など様々な事が男子と女子が入れ替わっている節があり前世の男子と今世の女子の運動能力は変わらないはず。
そう考えるとお世辞にも元強豪とは思えない。
「長門先輩、失礼ですが強豪と言うには」
「まぁ、聞け」
分かっているからその先を言う必要がないという目線を向けられる。
「私たちの二つ上の代と一つ上の代だ、今の私たちの代とは違ってやる気もなければ問題行動ばかりであった。正確には問題行動を起こしていたのは一つ上だが」
長門先輩は思い出すように
「私達が野球部に入った時三年の先輩方はやる気もなくふわっとした感じであった、上下関係もなく、練習もしっかりしない、その下に居た一個下の代は素行も悪く問題行動ばかり起こしていた」
「私としてもふわっとした感じで楽しんで野球をしようという風に練習するというのを否定するつもりは無い、実際に今まで私たちしかいなかった時は厳しく行っていたが新入生が入ってきたらそっちの練習法に切り替えようという話をしていた、もちろん練習をしないということは絶対にないが」
なるほど、たしかに厳しく辛い練習で強くなるというのも間違ってはいないし、楽しく野球することを意識して行うのもそれまた違う効果があるので一長一短の部分だから否定しないというのはいい事だ。
だが、私たちしか、という部分が気になるな。
「二つ上の先輩たちが一つ上の代の先輩たちをしっかり指導していなかったからだろう、いや、それだけではないし本人たちが、というのが八割方だが、二つ上の先輩たちが引退した一週間後だな、一つ上の先輩たちが街中を歩いていた護衛中の男性に集団で襲いかかるという事件があった」
「っ!!?」
「今まで暴行事件、カツアゲ、様々なことがあって何人かの先輩方は野球部から、何ならこの高校からもいなくなった先輩はいた。だけど今回は一つ上の先輩たち、全員の計画的犯行だった、そしてこの世界の男に強姦紛いのことをするというのは重罪だ」
確か最後までいってしまうと無期懲役はほぼ間違いない、未遂でもかなりの罪に問われたはずだ。
「いいか?男は女を狂わせる、良い意味でも悪い意味でもだ、だが私は悪い意味でしか見たことがない、実際に今日貴様が来た時に練習中にもかかわらず貴様の下に向かっていった、もし貴様が入れば野球どころじゃなくなるかもしれない」
それは......否定することが出来ない、というか、それを俺が理解することが出来ても実感がわかない。
確かにこの世界のことは思い出した、だが、だからといって順応できるかと問われればそれは違う。
「だからといって、俺の事を否定して、入れないっていうのは」
「そうね、それはいけないわよ〜」
!?
唐突に後ろから声がかかり、びっくりして振り返るとそこには......
「赤城くんの話を聞いた上で判断した方がいいと思うわよ〜」
そこには俺の担任、響先生が立っていた。
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