16話
グラウンドに行っている最中に思い出したのだが、この高校にはグラウンドがいくつかある。
なので野球部がどのグラウンドで練習しているのかが分からないのだ。
「なぁ、皆は野球部がどのグラウンドで練習しているか知っているか?」
「私は知ってるよ!」
「「「というかちゃんと調べてきましたよ(っす)」」」
なん......だと......
というか、どこにそんなのが書いてあったんだろう。
いや、まぁ、ちゃんと調べない俺が悪いんだけどさぁ。
「第2グラウンドで野球部がやってるって」
「第1はサッカー部が使ってるらしいよ」
へー、そうなんだ。
校舎内回ってないから知らないんだよね。
となると第2グラウンドはもしかしたら野球に特化してるのかもな。
歩いていくと前の方からカキーンと金属バットで打ち返す音がした。
ん、着いたか。
「お、見学の子達かな?今日初だ......よ......」
「見学しに来ました!いいなと思ったら入部させて頂こうかなと思ってます!」
代表して結衣が喋ってくれたのだが先輩は俺の事をじっと見つめて驚いている。
んん?
「だ、だ、だ、男子だぁぁぁぁ!」
「「なにぃぃ!!?」」
その先輩の叫び声を切っ掛けに他の先輩たちが走ってこちらに来た。
「あ、あれが噂になってた一年の男子」
「ハァ、ハァ、ヤバイ見てるだけで興奮してきた」
んー、ちょっと貞操の危機を感じるなぁ。
「貴様ら!練習中に何している!新入生は涼風に任せておけと言ったであろう!」
しゃらん、と鈴がなるように高く、それでいて水面が凪ぐようにスっと溶けるような声が聞こえてくる。
その声とともに渋々と部員の人達は練習へと戻る。
部長なのかな?
「新入生諸君、すまなかっ......た」
謝って来たと同時に俺に気づいたようで声が小さくなっていくと同時に警戒心剥き出しな目線を向けてきた。
えっ?なんで俺親の仇みたいな目で見られてるの?
「女を侍らせ何をしに来た、ここは遊びの場ではない」
「いや、俺は」
「お前の話など聞いていない!」
いや、聞いてたよね!!?
黒髪ショートでキリッとした部長さん?は深呼吸をしながら両手をぐっと握り少しずつ開いていく動作をする。
あれは、ルーティンか?
「新入生の女子達は、野球部の見学に来たのかな?」
「「「「は、はい、そうです『っす』」」」」
「分かった、涼風!この子達を案内してあげて!」
「へ?はい!分かりました!」
涼風先輩?は一緒に見に来た皆を連れて練習している先輩たちの方に向かっていった。
途中で凛や莉央が心配そうにこちらを見てきてくれたが、大丈夫だと目線で送った。
多分伝わってるよな?
「少し、話がある、ついてきてもらえるか?」
「もちろんです、その敵対心剥き出しな目線について、俺からも聞きたいところですしね」
ふんっ、と鼻を鳴らしてスタスタと歩いていってしまったので俺も後ろからついて行くことにした。
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