(97)個有スキル①
~紗彩目線~
「王子レオンの~魔法授業~始まるぞ~!!」
小さい子供が見る番組に出てくる歌のお兄さんのようなノリで、ホワイトボードを持ちながら私の目の前に立つレオンさん。
そんなレオンさんの横で、教材の一冊らしき本を読んでいるオズワルドさん。
そして私はクッションを何枚かのせた椅子の上に座っていて、目の前の机の上には私がメモ用に使っているノートが開かれている。
ニコニコと笑っているレオンさんを見て、私はふと思ってしまった。
私はどういう反応をするのが正解なんだろうか?
こっちとしては、どんな情報も聞き逃さないようにって思っていたんだけど。
そう思っていると、オズワルドさんが顔をあげた。
「サーヤは、自分の【個有スキル】の内容を把握しているのか?」
「わかりません」
「じゃあ、とりあえずまずは【個有スキル】の確認からだな」
オズワルドさんの言葉に首をかしげながら答えると、レオンさんが教えてくれた。
【個有スキル】と言うのは、魔法と似た力で実際には魔法ではないらしい。
魔法は相性の問題がなければほとんどの人が使えるのに対し、【個有スキル】は使える物はそのスキルを生まれ持った人間だけ。
つまりは、持ち主以外は使うことができないということ。
そして、ほとんどが魔法で成すことができないものばかりらしい。
でも、いっけん強そうに見える【個有スキル】もいい点ばかりというわけではない。
【個有スキル】は、そのスキルによって必ず『デメリット』が存在しているらしい。
この『デメリット』は、魔法とは違い『弱い・強い』ではなく『克服不可能・軽減可能』のどちらかだということ。
実際、努力して一週間弱体化が三日に減った人もいるらしい。
完全に克服することはできないけど、軽減することは種類によっては可能ということだ。
【個有スキル】はもともと制作に神人族が関わっているからか、名前は基本漢字や平仮名が使用されている。
だから、名前の書き方と呼び方は違う。
ちなみに【個有スキル】が生まれた理由は、神人族がこの世界の神本人に直談判したから生まれたらしい。
その理由と言うのが、「魔法だけじゃあ特別さがない」。
…………正直に言って、その理由はどうなのだろうかと思う。
というか、この世界の神もよく許可したな。
「【個有スキル】を調べる方法は、簡単だ。この紙に血を一滴たらしたら、【個有スキル】の内容と名前がわかる」
そう言いながらレオンさんが渡してきたのは、一枚の茶色の紙だった。
この世界の文字が並んで書かれていて、その下には数字。
文字の上には、空欄がある。
なんというか…………元の世界の都市伝説にあった某狐の降霊術に使われてそうな見た目の紙だ。
え、これに血を一滴たらすの?
なんか、変なの呼んでこない?
嫌だよ、私。
調べようとした結果、変なのに憑りつかれるとか。
まあ、もちろんのことだがそんなことを言えるような空気ではない。
オズワルドさんいわく、【個有スキル】の内容によっては進路に影響が出ることもあるらしい。
ということは、私自身のあるかもわからない【個有スキル】によってはこの騎士団にいたら邪魔になるかもしれないってことだ。
…………できれば、シヴァさんたちに恩返しができるようなスキルがいいな。
というか、まず私に【個有スキル】があるのかもわからないけど。
だって作ったのが神人族とはいえ、私はこの世界の人間ってわけでもないし。
でも、もしなかったら怪しまれるかもしれないし。
「ちょっと痛いが、我慢してくれ」
まじめな表情を浮かべるレオンさんにそう言われ、オズワルドさんに細い針で人差し指の腹を刺された。
それと同時にピリッとした痛みを感じ、指の腹からはプクリと赤い液体が出てくる。
それが紙の中心部分にある神社の鳥居のようなマークの上にたらすと、いくつかの文字が光り、空欄にいくつかの文字が書かれていた。
そこに書いてあったのは____
【付喪の狂宴】
という言葉だった。
次回予告:個有スキルが発覚した紗彩
だが、その能力は彼女が予想したものとはまた違ったものだった
紗彩「魔法が使えないとか、どうやってこの世界で生きていけと?神様は、鬼畜だった」




