(92)突撃王子様④
~紗彩目線~
「俺とオズワルドとレオン様は、同じ剣の師に教えを請うた…………まあ、簡単に言えば兄弟弟子だな」
そう言って、シヴァさんは説明してくれた。
もともと、レオンさんとオズワルドさんは同じ人から剣を習っていた。
そしてシヴァさんが引き取られてこの国に来た後、シヴァさんもその人から剣を習った。
いわば、彼らは兄弟弟子という関係らしい。
レオンさんとオズワルドさんは、シヴァさんにとっては兄弟子。
シヴァさんは、二人にとっては弟弟子。
だから、シヴァさん達ってどこか友人みたいな気安さがあるのか。
それに、レオンさんが『お兄ちゃん』『家族』って言ったのも兄弟子で家族と行っていいほど仲が良かったからなのだろう。
「ああ…………だからレオン様がシヴァさんに対して『兄』であると言っていたのですね」
「別に血のつながりがあるわけでもない。実際、親父と親子関係にあるのは俺だけだ。…………親父は前騎士団長であり、俺の剣の師でもあるんだ」
「…………すごい人に剣を習ったんですね、シヴァさん」
「ああ、親父はすごい人だ」
私が納得したように言えば、シヴァさんの言葉に驚いてしまった。
え、つまりシヴァさんは前の騎士団長の義理の息子でであり弟子って事?
騎士団長とか、そういう位が高い人ってあんまり弟子を取らないイメージがあったけど違うもんなんだね。
そう思いながら純粋にすごいという言葉を言えば、シヴァさんはどこか誇らしげな優し気な笑みを浮かべながら言った。
「…………シヴァが素直に……」
「オズワルド!俺たちの弟が、あんなに素直になっているぞ!」
「ちょっとあんたら、黙ってもらっていいか?」
シヴァさんの誇らしげな表情って初めてだなと思っていれば、オズワルドさんがボソリと言った言葉にレオンさんが大きな言葉で言ってしまい、シヴァさんの表情は一瞬で苛立たしげな表情に変わってしまった。
…………本当に一瞬すぎて、少しもったいないなと思ってしまった。
そして、レオンさん。
どうせなら、もうちょっと声を抑えて言ってほしかった。
誇らしげな表情を浮かべたシヴァさん、かなりかっこよかったのに。
そう思っていると、レオンさんがキラキラと瞳を輝かせながら私の方を見た。
うん、何故だろう。
嫌な予感がする。
「よし、サーヤ!俺のことは、『おじさん』でもいいぞ!」
「ちょっと、待て。なんで、あんたの思考はそうなった?」
うん、なんでそうなった?
そして、シヴァさん。私も非常のその意見に同意したい。
不敬であの世行きになったら怖いから、口には出さないけど。
そんな私達をよそに、レオンさんは不思議そうな表情を浮かべていた。
「ん?サーヤの保護者は、シヴァがなるんだろう?ならば、俺達にとっては姪になるぞ?なあ、オズワルド」
そう言ったレオンさんに、そう言えばそんな話題もあったなと思った。
というか、思い出した。
最近いろいろとありすぎて、誰が保護者になるのかということを考えていなかった。
とはいっても、彼らの人柄を理解しているから誰がなっても問題ないとしか思えない。
だってみんないい人だし、誰かを選ぶって言うのもよくわからないし。
でも、まさかレオンさんの中では私の保護者がシヴァさんで決定事項だったとは思えなかった。
そんなレオンさんに、オズワルドさんがやれやれと言いたげな雰囲気でため息を吐いた。
「落ち着いてください、レオン様。興奮しすぎて、ただでさえ残念な頭が余計に残念になっていますよ」
「ん?俺の頭は、この通りなんの問題もないぞ?」
オズワルドさん、相手は王子だよ?
ちょっと、変わってるけど王子だよ?
え、いいの?
そんな扱いで良いの?
あとレオンさん、その言葉は意味をそのまま受け取っちゃいけません。
とりあえず、わかったこと。
オズワルドさんは、意外に毒舌だった。
「…………俺は」
「…………なあ、サーヤ」
「なんですか?」
「サーヤは、シヴァのことをどう思っているんだ?」
どこか暗いシヴァさんの声にどうしたのだろうと思っていれば、レオンさんに声をかけられた。
そんな彼は、しゃがんで私のことをジッと見ていた。
シヴァさんのことをどう思っているか?
どうして今その質問が来るのだろうかと思っていれば、シヴァさんが慌てだした。
「なっ、レオン様!?」
「オズワルド」
「はいはい、わかっていますよ。落ち着け、シヴァ。ちょっと、こっちに来い」
「おい!?」
慌てるシヴァさん。
レオンさんはそんなシヴァさんを一瞥せずオズワルドさんの名を呼べば、彼はシヴァさんのことを羽交い締めしてどこかにズルズルと引きずっていった。
「なあ、サーヤ」
「はい」
「シヴァのことは好きか?」
次回予告:レオンに問われるサーヤ
彼女は気づいていなかった
その質問の本当の意味を