(77)ノーヴァからの誘い②
~紗彩目線~
「すまなかった」
「え、あのどちら様ですか?」
男性が急に頭を下げて謝りだしてしまい、私はそんなことしか言えなかった。
目の前で私に頭を下げる軍服を着て白い手袋とシンプルなエプロンをつけた男性。
困惑する私。
グスグスと泣いているノーヴァさん。
うん、かなりカオスな状況だ。
どうすればいいのかと思っていれば、男性が頭をあげた。
「…………俺は、ラーグ」
「紗彩といいます。よろしくお願いします」
ラーグさん…………前にノーヴァさんが教えてくれた料理人の獣人の人か。
たしか、ジョゼフさんの義理の息子さんだったはず。
義理ってことは血がつながっていないってことだけど、それにしては背も高いし似ている部分もある。
あれ、それとも熊の獣人ならみんなそうなのかな?
そう思っていれば、男性__ラーグさんは泣いているノーヴァさんの方をチラリと見た。
「………………いつまで泣いている?」
「…………元はと言えば……ラーグのせい」
「えっと?」
え?
いったい、どういうことなのだろう?
「…………俺が、ノーヴァに聞くように言った。ノーヴァには、【混血蔑視】の思想はない」
「【混血蔑視】?」
「………………【混血】を蔑み、物として扱う思想だ。一部にはいる」
え、何そのクソみたいな思想。
いや、別に他人の思想についてどうこう言うつもりはないけど。
ただ、ハーフってだけでもの扱いっていろいろと問題があると思うんだけど。
少なくとも、私には全く理解できない思想だ。
そう思っていると、ラーグさんの手の甲が白の手袋からチラリと見えた。
その手の甲には、緑色のうろこが生えていた。
鱗?
そういえば、ノーヴァさんがハーフのことを聞いたのはラーグさんに言われたからだった。
耳からして熊の獣人なのかと思ったけど、もしかしたら熊の獣人と他の種族__竜人とかとのハーフなのだろうか?
そう思っていると、そんな私の考えがわかったのかラーグさんが教えてくれた。
「俺は、熊の獣人とリザードマンの混血だ」
「そうなんですか」
リザードマンって言うと、確か吸血鬼と似たような能力を持っている魔族だったよね?
でも見た目的にトカゲ要素って手の甲の鱗だけだし、もしかしたら熊の獣人の血の方が濃かったのかもしれない。
確かジョゼフさん曰く、ハーフの見た目ってどっちの種族の血の方が濃いかによってかなり変わるらしいし。
そう考えていると、ラーグさんが私を無言で見ていることに気が付いた。
「…………だから言った……サーヤ気にしないって」
「………………あの言葉を聞いていればな」
「えっと……」
とりあえず何が言いたいのかわからなかったけど、私はそのままラーグさんに抱き上げられた。
「…………厨房、使うんだろ?ある程度の道具は用意してある。他に必要なら、言え」
「ありがとうございます」
無表情だけれどどこか雰囲気が少しだけ柔らかくなったラーグさんの言葉に頷きながら、私はお礼を言った。
使わせてもらうのは嬉しいけど…………どうしてここにいるみんな私を抱き上げるんだろう?
次回予告:ノーヴァ目線で語られる今回の話の裏側
ラーグに対するノーヴァの気持ちとは?




