(58)足りない
~紗彩目線~
「おやすみなさい、シヴァさん」
「ああ、おやすみ」
狼の姿のシヴァさんにそういえば、シヴァさんは寝転がりながら言った。
眠りについたシヴァさんの頭に背を向けながら、シヴァさんのお腹の上に頭を乗せる。
なぜか、狼の姿で寝るようになったシヴァさん。
そういえば、今日の朝も狼の姿だったっけ?
まあ、モフモフの海を堪能できるからいいんだけど。
とりあえず、今までで集まった情報を思い出そう。
この大陸には、人間がいない。
この世界に人間がいないのかは、まだわからない。
この大陸にいる種族は、四種族。
シヴァさんたち獣人と魔族、精霊と竜人。
聞いたところ、この世界では魔族は小説の中みたいに敵対しているってわけではないらしい。
そして人間はいないけど、過去には私のように異世界から来た日本人らしき人がいるらしい。
何時代の人かはわからないけど、たぶん明治から戦前か戦後から現代の人。
確か、第二次世界大戦の時は英語は敵国の言語だから軍隊の学校以外の教育制度から消えたはずだし。
騎士団の食事の時に私が雑炊を食べれたのは、『ささやま かおる』さんがこの世界に和食を伝えたから。
でも、わからないこともある。
どうして、彼らはこの世界に来たんだ?
いったい、どういう経緯で彼らはこの世界にやって来た?
【神人族】は、神に連れてこられて来た種族ってジョゼフさんが言っていた。
二人が広めた知識から、たぶん二人はこの世界の神に選ばれてこの世界にやって来たんだろう。
それが強制なのか、二人の協力の元でなのか。
何より、どうして私はこの世界に来たんだ?
異世界に来るなんてかなり大きな出来事を、私を含めた三人が経験している。
でも、逆にどうしてこの三人なの?
ただただ、適当に選ばれたにしては私以外の二人がおかしいし。
選ばれたのだとすれば、いったいどういう条件で?
なんらかの共通点があるとすればいったい何?
私は、いつも通りの行動をしていただけだ。
会社に向かうために電車に乗っていた。
電車に乗っている会社員なんて、私以外にもたくさんいる。
それに、私の前に来たっていう二人だってどういう行動をしていたのかもわからないし。
本来ならその二人に詳しく話を聞くべきなんだろうけど、ジョゼフさんは歴史書での記載をほのめかしていた。
ということは、この二人が今も生きている可能性は限りなく低い。
そうなると、もしかしたら話すことすら無理になっている可能性だってある。
…………小説内の主人公たちが羨ましくなってきた。
神から異世界にトリップすることを伝えられた彼らは、まだ自分の立ち位置なども理解しているのかもしれない。
でも私は自分の能力も、どうしてこの世界に来てしまったのかもわからない。
元の世界で、私はいったいどうなっているんだろう?
小説の中では、主人公が死んでいるパターンと植物状態のパターンがあった。
生きているのか、死んでいるのか?
それとも、行方不明者扱いなのか?
どちらにしても、両親には迷惑をかけているんだろう。
とにかく、元の世界に戻りたい。
戻って母さんに謝って、あんな会社を辞めてやる。
そのためなら、なんだってできる。
とにかく、異世界に来てしまった原因と帰る方法を探さなくちゃ。
でも、なりふり構わず目立つわけにはいかない。
ジョゼフさんも言っていた。
日本語__【古代語】は、この世界では知っている人が少ない。
何より異世界から来たなんて、バレるわけにはいかない。
もしバレれば、人体実験とかされる可能性もあるし。
たとえあり得なくても異世界だから何が起こるかわからないし、騎士団に保護されているから大丈夫だと安心なんてできない。
だって、世の中に絶対なんてないんだから。
なんとかバレないようにしながら、元の世界に帰る方法を探さないと。
次回予告:何も起こらないと、時間ってあっという間に過ぎてしまうんだね
でものんびりとしている時にやって来るのは、危険な事件!




