表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/278

(37)『霧夜の民』

~セレス目線~



 状況は、最悪ね。


 周りの観光客たちを避難させながら、サーヤちゃんを探す。

 とはいっても、サーヤちゃんの捜索の方は難航しているけど。


 何しろ、あの子の身長はかなり低い。

 人ごみの中に入ってしまえば、すぐに埋もれて姿が見えなくなってしまう。

 怪我をしていなければいいのだけど。

 それに、この騒ぎの原因もわからないし。


 なんとかある程度避難させれば、団長たちがいるのが見えた。



「団長」

「セレス!…………サーヤは?」



 団長に近寄れば、団長は驚いた表情を浮かべていた。



「ごめんなさい。探しているのだけど、まだ見つかっていないわ」

「すぐに見つけるぞ」

「何があったのよ」



 サーヤちゃんのことを伝えれば、団長は焦った表情を浮かべて周囲を見ながら言う。

 そんな団長の姿を見て、団長の隣に来た副団長に聞けばその答えは返ってきた。



「事件を起こした者たちは、すでに捕らえています。ですが、どうやらその者たちに事件を起こすよう糸を引いた黒幕がいるようです」

「どういうこと?」



 副団長の話が本当なら、今回の事件は何者かが裏で手引きしたってことよね?

 それなら、目的が他の可能性があるわね。

 

 そうなると、やっかいね。



「その黒幕は、そいつらの話じゃあ『霧夜の民(きりよのたみ)』らしい」

「なんですって!?」



 眉間にしわを寄せて行った団長の言葉に、アタシは思わず叫んでしまった。


 よりによって、裏で糸を引いていたのが『霧夜の民(きりよのたみ)』なの?

 あんな、厄介な盗賊団が今回の事件を?


 でも、それにしてはやり方が下手すぎる。


 あいつらは闇夜に乗じたり、霧で周囲が把握できないときに奇襲を主な戦法で襲ってくる盗賊団だったはず。

 こんな白昼堂々と、騎士団の本部が近くにある街を襲うかしら?

 

 あいつらは、かなり狡猾で目的のためならどんな犠牲だってものともしない。

 でも、失敗の可能性の高いことは今までのやり方からしてしないはず。


 それなら、やっぱりほかに目的があって今回襲ってきた奴らを利用したってことかしら。

 

 そうなると、その目的はいったい__



「主犯格の男を捕らえたところ、『話が違う』『霧夜の民に騙された』と喚いていたようです」



 副団長が、真剣な表情を浮かべながら言った。


 でも、それなら本当に『霧夜の民』が今回の件に関わっているかはわからないわね。

 出まかせの可能性もあるし。

 

 あの盗賊団は、他の種族の国でも問題視されている盗賊団。

 その存在なら、もしかしたら騎士団所属のアタシ達よりも裏の世界の方が知られているし。



「出まかせの可能性もあるが、もしこれが本当だった場合はかなり危険だ。サーヤの保護と同時進行で進めるぞ」

「わかったわ」



 団長の言葉に、アタシと副団長は頷いた。

 さすがに、サーヤちゃんの保護が絶対に優先することはできないけれど、それでも早く保護しなきゃ。



「アル、お前は本部に戻れ。今回の事を、ノーヴァたちにも伝えろ」

「承知しました」



 団長の言葉を聞いた副団長がペコリと一礼した後、その場から走っていなくなった。


 副団長がいなくなると、今度は団長がアタシのことを真剣な表情で見た。



「俺はこのまま残党狩りと、霧夜の民共の捜索を中心にする。セレスは、サーヤの捜索を中心にしてくれ」

「ええ」



 団長と別れて、アタシは走り出した。


 今のあの子は新品の服を着ているから、匂いも薄い。

 集中して探さなきゃ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ