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(36)出会い

~紗彩目線~



「な、なんとか抜け出せた」



セレスさんが見えなくて焦りながら人の波から外れたら、どうやら路地裏に来てしまったみたいだ。


 周りを見渡しても、灰色の壁が左右にあり、ゴミが落ちていて陰鬱とした雰囲気が漂っている。

 前を見ても暗くて、何があるのかわからない。

 後ろを見ても、慌てて逃げる人たちがたくさんいた。


 どうしよう?

 路地裏なんて危険だし、今すぐに離れた方がいい。

 でもここから出た場合、また人の波にのまれて余計にセレスさんと離れてしまう可能性がある。


 とにかく、今は人の波が収まるのを待った方がいいかもしれない。

 ここら辺に地理なんて私はわからないし、こういう時は下手に動かない方がいいかもしれない。


 周りをキョロキョロと見まわしながら考える。


 あの悲鳴は何だったんだろう?

 一番に考えられるのは、事件。


 でも、事件ならその現場にセレスさんも行くかもしれない。

 それなら、事件現場かもしれない人の波とは逆方向に行けばいいかな?


 …………やめておこう。

 もし言ったとしても、セレスさんがいなかったら?

 それに、本当に事件だとしても自衛できない私が行ったとしても逆に危険になる。



『なあ』

「!?」



逃げている人たちを見ながらどうしようか考えていると、後ろから話しかけられた。


 振り返れば、そこにはうなじまでの黒髪の赤いタレ目の瞳の男性が立っていた。

 暗くて少し見えづらいけど、男性の黒髪の右側の一総だけが銀色だ。

 二色の髪って、珍しいな。

 身長は、私と同じぐらい。

 …………自分と同じぐらいの身長の人がいるのってホッとするものなんだね。


 見たところ、この男性には動物の耳や尻尾がない。

 ということは、観光客かな?


 それにしても、急に話しかけられてびっくりした。

 この人、全然足音がしないんだもの。



「えっと…………」



 そう言えば、私ってセレスさんたち以外に言葉が通じるのだろうか?



『あー、言葉通じないんだ。珍し~』



 あ、やっぱり通じないんですね。

 そう思っていると、男性はぶつぶつと何かを呟いた。



「これで通じるかな~?なーにやってんの、こんなとこで?」



 どうやら、先ほど呟いていたのは魔法だったらしい。

 


「私は付き添いの大人の人と買い物に来たんですが……」

「あ~、離れ離れってやつ?」

「…………まあ、そんな感じです」

「あはっ、ど~んまい」



 私が事情を離せば、男性はニヤニヤと愉快そうに笑いながら言った。


 とりあえず思ったこと、なんなんだこの人。

 何がそんなに面白いのか、全く理解ができない。



「何か、ご用ですか?」



 心の中でムッとしながらそう聞けば、男性は首をかしげながら私を見てきた。

 いや、首をかしげたいのはこっちなんだけど。



「ん~ん、おチビちゃんが一人でこんな所にいたから気になっただけ~。おチビちゃん弱いんだから、こんな所にいたら食われちゃうよ~」



 弱い…………確かに男性やシヴァさんたちのように背の高い男性からすれば、私は弱いだろうね。

 だからできる限り迷惑をかけないように行動しようとしているのに、こんなことに巻き込まれるし。

 私って、運悪いのかな?


 そう思ったけど、男性のある言葉に不思議に思ってしまった。


 この人、私のことチビって言ったわね?

 私は確かに成人女性の平均をいっていないから小さいのは自覚しているけど、この人だって私と同じぐらいの身長だ。

 私がチビなら、この人もチビになるはず。

 自覚していないのか?



「…………ご丁寧にありがとうございます。あとは、私がチビなら同じぐらいの身長のあなたはどうなるんですか?」

「ん~? …………まあ、いいや。チビちゃん、お話ししよ~」



 私が気になったことを聞けば、男性はまた首を傾げたかと思えば私の手を掴んで笑った。




 とりあえず言いたいこと。

 なんなんだ、この人(二回目)。

 なんで身長の事を言及したら、私と話すことになるんだ?

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