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(30)保護者

~紗彩目線~



「ここは、獣人騎士団と呼ばれている。ほとんどが、獣人の騎士で形成されている。俺は、騎士団の代表のようなもので実際に現場で指揮も取っている」



 シヴァさんが、ホワイトボードに大きな三角形を書きながらそう言った。

 三角形の頂点に、『シヴァ』という文字が書かれている。


 たぶん、シヴァさんたちは私にわかりやすいようにするために図を書いているんだろう。

 別に、図を書かなくても口頭でも理解できるんだけどな~。



「私は、団長がいないときに指揮をとります。簡単に言えば、騎士団の中では二番目に偉い感じです」

「アタシは、参謀。簡単に言えば、作戦を考えるのが仕事よ。立場的には、アルと同じぐらいかしらね」



 アルさんとセレスさんが、シヴァさんの下に自分の名前を書く。


 なるほど。

 簡単に言えば、生徒会で言う副会長がアルさんだ。

 セレスさんは……なんだろう?

 書記?会計?


 そう考えていると、アルさんがノーヴァさんの肩をポンポンと叩いた。



「俺?俺は…………三人が忙しい時に代わりに書類とか片付けたり、対処したりするのが役目。騎士団、結構忙しいから」



 あ、だからノーヴァさんの役職は補佐なのか。

 まあ、確かに騎士団をまとめるなんて三人だけじゃあ大変そうだもんね。



「私は、説明した通りこの騎士団で医者をやっているよ。主に手当てや健康診断かな?」

「なるほど、いろいろあるんですね」

「それで、これが本題だ。君を保護するにあたって、保護者が必要になる」

「保護者?」



 ジョゼフさんの説明に反応を示していると、シヴァさんが真剣な表情で私に言った。


 保護者って言うとあれだよね?

 両親とかそういうのだよね?

 え?

 もしかして、私って現在進行形で親権が危うい状態?

 私の両親、知らないうちに異世界で娘の親権が奪われていましたとかそんな感じ?



「この国では身元不明の者は、原則としてその行動の責任をとれる者が近くにいなければいけません。特に、サーヤのように体が小さいものは犯罪にも巻き込まれやすいです。保護者がいなければ行動の自由はありませんし、立ち位置的にも低い身分で犯罪に巻き込まれた時も誰にも気づかれず、気づかれたとしても騎士団が絶対に動くという保証はできません」



 アルさんの説明を聞いて、なんとなくだけど理解した。


 簡単に言えば、戸籍に似たようなものだ。

 保護者という存在を得ることで、自分の身元を証明して何かあった場合は証明した人物も責任をとる。


 つまり、私はその保護者という存在を得なければ働くことさえできない。

 元の世界に戻るための、情報収集もできない。

 それどころか、何もわからないこの世界で犯罪に巻き込まれても、誰にも気づいてもらえないし助けても貰える確率も低い。



「ここまでは、わかりますか?」

「保護者がいなければ、私は自由に動けないし犯罪に巻き込まれた時も助けられないということですよね」

「そうです。保護者がいれば、それだけである程度問題がないことを証明されます。実際、身元不明者というのは犯罪者が多いですから、身元不明者となってしまうと犯罪者と勘違いされてしまうこともあります」



 なるほど、保護者がいない場合かなりデメリットが生まれるということか。


 でも、保護者を得るにはどうすればいいのだろう?

 この世界には、もちろん知り合いなんていない。


 それに、子供ならともかく私は大人だ。

 子供であれば不憫に思われて保護者に立候補する人がいるかもしれないけれど、大人の場合はそれはない。



 …………あれ、私って結構つんでない?



「質問いいですか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「保護者が必要と言いますが、私には知り合いがいません。その場合は、どうするんですか?」

「問題ないよ。騎士団に所属している者が、保護者となるからね。実際、そういう理由でそのまま騎士団所属となった元身元不明者の子も結構この騎士団にいる」



 アルさんに質問すれば、答えはジョゼフさんが答えてくれた。


 なるほど、その場合は私はこのままこの騎士団に所属している誰かを保護者にするってことか。

 …………とりあえず、できる限りの手伝いはしよう。

 もともと、体育会系じゃないからどこまでやれるかわからないけれど。



「サーヤの保護者候補は、ここにいるメンバー全員だ」

「え?そうなんですか?」



 シヴァさんの言葉に、思わず驚いてしまった。

 表面上は、なんとか取り繕えたけど。


 だって、この場にいるメンバーってみんな結構責任重大な立場のメンバーだ。

 それなのに、どこの人間かもわからない私の保護者になるのか?


 別に、問題を起こすつもりはない。

 お世話になる以上、役にだって立つつもりだ。


 でも、まさかここにいるメンバーの誰かになるとは思わなかった。



「勝手に選択を狭めてしまって、すまないね。でも君の立場と今の健康状態や体格を考えると、ある程度しっかりとした地位と実力がなければ君の安全は保障できないと判断したんだ」



 ジョゼフさんの言葉に、一瞬ドキリとしてしまった。


 まさか、私が異世界出身だとバレたのか?

 いや、でも異世界出身なんて体験者でもない限りはそんな発想は出ない。


 ということは、ただ単に今の状態の私の立場のことを言っているのか、この世界には過去にも異世界から来た人間がいるかのどちらか。


 でも、異世界から来た人間だと思っているのであればそう聞けばいい。

 聞いてこないということはまだバレていないってこと?


 …………とにかく、情報が少ない。今は、なんとかこの世界の知識をつけなきゃ。



「別に、今すぐに決めろとは言わない。ある程度、交流の期間は設ける。だが、できればいろいろとしっかりと考えたうえで決めてほしい。保護者は、最も近い人物になるからな」

「わかりました」



 シヴァさんの言葉に、私は頷いた。




 この人たちが教えてくれることに本当なのかわからないけれど、今はその期間の間に人柄とか情報をできる限り見つけよう。

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