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(29)自己紹介

~紗彩目線~



 ジョゼフさんに抱き上げられてやって来たのは、【会議室】というプレートがかけられた部屋だった。



 中に入れば、狼さんと黒猫さんと女の人(長髪の男の人?)と無表情な黒猫さんの四人が一斉に私達を見た。


 うん、すっごくびっくりした。

 思わず肩をビクッとしたら、ジョゼフさんに背中をポンポンとさすられた。



『やあ、またせたね』

『別に、それほど待っていないから平気だ』



 ジョゼフさんの言葉に、狼さんがなんでもないように返した。

 うん、やっぱり待たせたかもしれない。

 


『あらためてだけど、サーヤ君の言葉を理解できるようにここにいるメンバーだけ【言語一致魔法】をかけさせてもらいたい』

『その様子だと、大丈夫みたいだな』

『ああ、ジャック君が力を貸してくれてね。無事に、彼女とコミュニケーションをとれたよ』



 ジョゼフさんの言葉に、シヴァさんが安心したような表情を浮かべてジョゼフさんに聞いている。


 まさか、相手に魔法をかけることで一方的だと思っていたのに会話できるとは思わなかった。



『おや、ジャックにかけたのですか?』

『ああ。彼女とは、最も年が近いからね。私達相手では相談しにくいこともあると思ってね。本当なら、同性が良いのだろうけど』



 黒猫さんの問いに、ジョゼフさんが答えてくれる。


 う~ん、別に相談しにくいことなんてあるのかな?

 あ、でもジャックさんの性格は話しやすいタイプではあるかも。

 あと、身長差的にも話しやすい。


 にしても、同性か。

 確かに女性は全く見かけなかったけど、やっぱり騎士団には女性がいないのかな?



『あら、アタシは~?』



 そう言って、笑いながら手を振っている女の人(?)。

 あれ、もしかしてあの人女の人で正解だったのかな?



『セレスは論外』

『んだと?』



 無表情な黒猫さんの言葉に、女の人(?)がギロリと効果音が付きそうなほど鋭く睨んで重低音の声音で言っているのを見た。


 なんだか、ヤバい現場を見てしまった気分だ。

 というか、あの女の人って男の人なの?

 それとも、女の人?


 とりあえず、あの女の人の名前は文脈から『セレス』さんなんだろう。



『落ち着け』

『は~い』



 狼さんがセレスさんを注意すると、セレスさんはキュルンという効果音が聞こえてきそうなぐらい可愛く笑った。


 …………やっぱり、女の人?

 うん、どっちでもいいや。

 別に男の人が女の人みたいな話し方や行動取っていても、それはその人の個性だしね。

 他人がどうこう言うものでもないし。


 私は、考えることを放棄した。

 うん、考えなければいけないことは他にもあるからね。





「あらためて、自己紹介をしよう」



 魔法をかけ終えて、四角形のテーブルに座る私達。


 私は、ジョゼフさんの膝の上に座っている。

 私の手前には、左側に狼さんでその右隣に黒猫さんが座っている。

 私の左隣にはセレスさん、右隣には無表情な黒猫さんが座っている。


 なんか、これって自己紹介っていうよりも学生の時にやった二者面談の気分だ。

 実際には二者面談じゃなくて、六者面談だけど。



「俺は、獣人騎士団の団長のシヴァだ。これから、よろしく頼む」

「紗彩です。えっと、よろしくお願いします」



 狼さん__シヴァさんの言葉を聞いて、私も名乗って頭を下げる。

 

 ところでジョゼフさん、どうして私が頭を下げるときビクッとするんですかね?



「アルカードです。アルでいいですよ。副団長を務めています。困りごとがあれば、なんでも聞いてくださいね」

「アタシは、セレスよ。騎士団の参謀をしているの。早速だけど、服を買いに行かない?サーヤちゃんなら、きっとかわいい服が似合うわ」



 黒猫さんがアルさんで、セレスさんは思った通りセレスさんだった。

 アルさんは優し気な笑顔を浮かべながら、セレスさんは女子高生を思わせるように快活な笑顔で言った。


 それにしても、可愛い服か…………。

 学生時代は本以外でお小遣いを使ったことなんてなかったからな~。

 あの頃はニキビも酷くてかわいい服着る勇気なんてなかったけど、ニキビはなくなったから今ならいけるかな?


 まあニキビはないけど、糞上司たちが仕事押し付けるせいで肌のお手入れなんてできなかったから肌はカサカサだけど。



「後にしろ、セレス。今は、サーヤに伝えなければいけないことがある」

「そうですよ。それに服もそうですが、彼女の勉学に必要なものも集めなければいけませんよ」

「あ・と・で・だ」



 シヴァさんの苦言に、アルさんが笑いながら言う。

 そしてそんなアルさんに、シヴァさんは苛立ったような声音で言う。


 でも確かに魔法で言葉が通じるようになったとはいえ、それはここにいる人たちとジャックさんだけだ。

 さすがに言葉も文字も覚えないといけないし、ここの決まりや文化も覚えないといけない。

 いつ戻れるかわからないし、働くにはやっぱりある程度知識がないといけないと思うし。


 それに、純粋に異世界の文化というのも気になる。

 日本と共通していることはあるのかな?

 それに、この世界にはどんな物語があるんだろう?

 すごく気になる。



「は~い」

「わかっていますよ」



 セレスさんとアルさんが笑いながらそう言えば、シヴァさんは疲れたように溜息を吐いている。


 そんな彼らを見ていれば、チョンチョンと服の袖を引っ張られた。



「俺、ノーヴァ。…………甘いもの好き?」

「好きです」

「そっか…………今度、食べに行こう」



 無表情な黒猫さん__ノーヴァさんに聞かれ答えれば、少し口角をあげながらそう言った。


 無表情って思っていたけど、たんに表情が表に出にくいだけなのかもしれない。



「彼女の体が、元通りの健康な状態に戻ってからだよ。あと、ノーヴァ君。君も、他の子達と一緒にちゃんと立ち位置を伝えなさい。サーヤ君、彼は団長・副団長・参謀の補佐を務めている」

「補佐……ですか?」



 ジョゼフさんの説明に、疑問を持ってしまう。


 団長や副団長は、まあ騎士団だからわかる。

 参謀も、まあ作戦とか必要だからわかる。

 

 でも、彼らの補佐っていうのはいったいどういう仕事なんだろう?





「それも込みで、一から説明しよう」



 シヴァさんが、どこから取り出したのかホワイトボードを手元に置きながらそう言った。

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