(264)やりたい事➂
~ジャック目線~
サーヤを抱きしめながらも、考える。
サーヤは、やりたい事が見つからないらしい。
でも、やりたい事なんて人それぞれだと思う。
そう思いながらも、サーヤの兄貴分として考える。
やりたい事って、そもそもどうやって見つけるのだろう?
やりたい事…………得意なこと?
いや、それは得意だというだけでやりたいことにつながるとは限らない。
やりたい事か…………目標とも違うしな。
…………好きなこととか?
好きなことなら、やりたいとも思えるし。
「サーヤはさ、何が好き?」
「何が…………好きですか?」
俺の質問に、首を傾げながらも聞き返すサーヤ。
「うん。例えば買い物とか、読書とか」
「…………そうですね。ジャンル関係なく読書でしょうか? あとは…………アクセサリー作りとか結構好きでしたね」
「アクセサリー作り?」
サーヤが読書好きなのはなんとなくだけど知っていた。
でも、まさかここでアクセサリー作りが出てくるとは思わなかった。
アクセサリーか…………なんかピンセットとか使って細かい作業をしてるイメージだな。
俺には、全く向いてないと思うけど。
「はい。特殊な液体を型に流し込んで、太陽光で固めたりするんです。作って、友達とか家族とかにプレゼントしてたんですよね」
「…………サーヤは、それが嬉しかったの?」
いつも無表情なサーヤの口元が少しだけ緩んでいたし、目元も懐かしいと言いたげに緩んでいた。
サーヤにとって、とても嬉しかったんだろうな。
思わず、俺は呟いた。
そんな俺の言葉に、サーヤは目を見開いて朗らかに笑った。
「そうですね。やっぱり上手下手は関係なく、自分が丹精込めて作った物をプレゼントして喜ばれたり使われているところを見ると嬉しいじゃないですか?」
「なるほど…………俺って使える物を作れるほど器用じゃないからな~。サーヤの気持ちは、ちょっとわかんない。でもさ、それって道具作りとか結構好きなことじゃない? サーヤの道具には、凄く助けられたし!!」
「道具作り…………」
俺の言葉に、サーヤは顎に手を当てて考え込んでしまった。
うーん、違ったのかな?
でも、サーヤの道具って結構強くて役に立つものが多いし。
アクセサリーみたいにキラキラした物ばかりじゃないけど、物作りって言う点では共通していると思うんだけど。
そう思っていたら、サーヤが笑いながら俺に礼を言った。
「ありがとうございます、ジャック君」




