(256)冷静王子様との話し合い➂
~紗彩目線~
「そもそも、俺の実の家族の間に愛情なんてものは存在しないからな」
「ああ…………政略結婚だからですか?」
うんざりとした表情でなんでもないように言うシヴァさんの言葉に、私は思わず聞き返す。
正直に言えば、王族の結婚なんて政略結婚のイメージしかない。
そんな私の言葉に、首を横に振るシヴァさん。
いつもとは違い、暗い表情を浮かべるシヴァさんの口からは驚くべき話が飛び出した。
シヴァさんの家族__現魔族の王と政略結婚を行っているのは、上の兄弟__つまり今回来たあの二人のような上の兄弟の母親のみらしい。
それ以外の世間で言うところのハーフと呼ばれることもを生んだ女性たちはすべて政治的なものは関係ないのに、何故か女性側が悪いふうに言われ、現王は格下な種族を娶ってあげた聖人君主という扱いを受けている。
しかも、女性側も異常と思うほど現王を求めて、現王は子供が生まれれば女性の方には全く興味を持たないらしい。
「…………俺の母が狼の獣人でなければ、俺も他の奴らと同じように両親どちらからも放置されていただろうな。何しろ、両親どちらからもかまって貰えない子供の泣く声が毎日聞こえていたからな」
仄暗い色を瞳に浮かべ、俯きながら言うシヴァさん。
その表情は、孤独と憎しみを混ぜ込んだような複雑な表情だった。
…………正直に言えば、彼の家庭環境がここまで歪んでいるとは思わなかった。
異母兄弟ということは、魔族の国の王族は一夫多妻制なのだろう。
それにしては、周囲の悪意と夫婦関係の一方的な部分が結構目立つ。
でも、王からの寵愛を欲するっていうのは小説とか現実的にもあり得る話だ。
特に魔族ではない奥さんたちなら、寵愛を得ることで不安定な自分の地位を固めたいのかもしれない。
それでも、子供を完全に放置するっていうのはおかしいと思う。
自分の立場を万全の物にするために自分の子供ですら利用する人は、元の世界でも歴史上にたくさんいた。
種族柄と言われてしまえばそうなのかもしれないけど、政略結婚でなくても一方的な恋愛感情を持つ女性をわざわざ王族が娶るだろうか?
王族は、いわば国の顔であり頂点に立つ存在。
そんな存在に強制なんてできないだろうし、何よりハーフに対して差別する人が多い国なら周囲が反対するだろう。
反対どころか、物理的に排除しようとする人だっているはず。
だと言うのに女性側が悪く言われ、現王が聖人君主扱いっていうのはちょっと現王にとって都合がよすぎる。
「…………なんというか、都合がよすぎると思うのですが」
「ああ、俺も思う」
思わず呟いてしまった私の言葉に返ってきたのは、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべたレオンさんだった。
「俺の見解だが、恐らく今代の王__シヴァの父親は精神操作系の個有スキルを持っているんだろうな。それなら、周囲の意識操作などもできる。…………正直、肉欲が強いと言えないほど妻が多いけどな」
「妻が多い? 一夫多妻ってことですか?」
「一夫多妻にしては、多すぎる気がするけどな。だって、40人ぐらいいるんだぞ?」
「40人!?」
レオンさんの言葉に、私は思わず大きな声で叫んでしまった。
いや、多すぎでしょ!?
次回予告:シヴァの家庭環境を聞いた紗彩
その後に知ったのは、紗彩の今の立場の危うさだった




