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(249)とある謎

~目線なし~



「やあ、シヴァ団長」

「ああ…………キキョウ団長」



 街に出た複数の怪物の対処を終えたその日の夜、キキョウは第一執務室でシヴァと話していた。



「…………今日は、サーヤが世話になったようで。ありがとう」

「いやいや、うちのイアンも世話になったからね。…………まあ、今回のお出かけは残念な結果になってしまったけどね」

「…………」



 真剣な表情で、けれどどこか柔らかな表情で言うシヴァ。


 そんなシヴァに、微笑ましいと言いたげな言葉で言うキキョウ。

 だが怪物のことを思い出し、彼は眉間にしわを寄せる。


 彼の脳内では、歪んだ笑みを浮かべるロイドの顔が浮かんでいた。


 そんなキキョウに、何かを考えこむシヴァ。



「…………キキョウ団長は、あの二人の関係をどう思う?」

「うーん、微笑ましいかな。私も、なんだかんだ言って彼らと似た関係の間に生まれたからね。お互いが想いあっているのならいいと思うよ。…………シヴァ団長はそうじゃないのかい?」

「…………あいつが幸せならそれでいい。何より、あいつの言う『20歳』というのはこの世界で言うところの『200歳』と同じようなものだろ? なら、年齢的に見ても問題ないだろ。…………そもそも俺の両親の年齢差から考えれば、まだあの二人の年齢差は問題ないだろ」



 竜人の男性と神人族の女性の間に生まれたキキョウからすれば、紗彩と彼女に片思いをするイアンは若い頃の両親を見ているような気分だった。


 元々、彼の母親は最初の頃は父親に対して特別な想いを抱いていなかったからだ。


 何より紗彩と関わるようになってから、イアンは少しずついろいろなことを体験するようになった。

 記憶を失い、どこか人形のような彼を見てきたキキョウにとってはそれが何よりも喜ばしいことだった。


 そんなキキョウに、シヴァもまたイアンと紗彩を見て自身の実の両親を思い出す。


 シヴァの記憶の中では、常に別な場所にいる父と嫌味な親族の奴らから自身を守る母親がいた。

 正直、シヴァにとってはあの両親が仲良くしているところなど全く想像もできなかった。


 だが紗彩が年齢差を気にしていることを思い出し、両親の年齢差(年齢差は約500歳)を思い出して言った。


 なお、シヴァの母親が結婚したときは母親はまだ未成年である。



「だが、あいつがこの世界に来てしまった理由が気がかりだ」

「彼女がこの世界に来た理由?」



 紗彩が幸せならいいと言ったシヴァには、そんな懸念があった。


 紗彩は、元の世界では死んでいる。

 彼女が神人族であることを知ったシヴァは、神人族に関係する閲覧可能な資料をすべて読んでいた。


 だからこそ、紗彩とかつてやって来た二人の神人族とではいくつかの違いがあることに気づいたのだった。



「何故、サーヤと前の神人族とでは違いがある? …………キキョウ団長、あんたはサーヤのことで何か知っているんじゃないか?」



 睨んでいると勘違いされてしまいそうなぐらい真剣な表情で言うシヴァに、キキョウはため息を吐きながらも記憶の中での母の言葉を思い出す。



「…………私が母から聞いたのは、彼女が何者かの手によってこの世界に連れてこられることのみだよ」

「それは神じゃないのか?」

「違うと思うよ。神であれば、母はそう言うだろうからね」

「神じゃない存在が、何故サーヤをわざわざ連れてくる?」

「…………何が言いたいんだい?」

「なんらかの理由で神人族を欲する存在がいて、そいつらがいろいろと工作を行い異世界に干渉したせいでサーヤは死んだ。…………俺は、そう考えている」



 シヴァの懸念事項はここにあった。


 【なんらかの理由で神人族を欲する存在がいて、そいつらがいろいろと工作を行い異世界に干渉したせいでサーヤは死んだ】


 __それは、つまり神人族(紗彩)を狙う何者かがこの世界に存在しているということ。


 シヴァ本人としては、成人していようが子供であろうが紗彩は大切な仲間だからこそ、そう言った懸念事項はしっかりと潰しておきたいのだ。



「つまり、その存在をなんとかしたいと…………シヴァ団長はそう言いたいのかい?」

「簡単ではないだろうが、その存在がいるのなら必ずこちらに何らかのコンタクトを取るはずだ」

「なるほどね…………そう考えると、あのロイドという少年が最も怪しいと思うね。彼女に対して、異様に関わりを持とうとしているし」



 シヴァの言葉に、キキョウの脳内に浮かんだのはロイドの存在だった。


 紗彩から話を聞けば、彼女にロイドが近づいたのはまだ彼女が騎士団に保護されたばかりの頃だったらしい。


 そうなると、騎士団に何らかの嫌がらせが目的とは言いづらい。


 何しろ、その頃の紗彩は専属技師という立場ではなく、ただ騎士団に保護されているだけの存在。

 騎士団関係者とはいえないからだ。






「…………」

「どうしたんだい、シヴァ団長?」

「…………いや、なんでもない」



 考え込むシヴァに気づき、キキョウが話しかけるが彼は首を横に振るだけだった。



(ロイドという名前…………どこかで)



 シヴァは、そう考えながら必死で過去の記憶を思い出そうとしていた。



次回予告:とうとう始まる最終章!!

     最終章でも、いろいろと驚きの事実が盛りだくさん!!

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[一言] 最終章……だと!?
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