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(248)ロイドの正体

~紗彩目線~



「なるほど…………君がこの怪物たちの操り手かい?」

「そうだよ~」



 緊迫した空気が流れているのに、ロイドさんはそんなことを気にしていないのか前の時と同じように明るい声で言う。



 正直に言えば、なぜ彼があんな簡単に言えたのかがわからない。


 騎士団長であるキキョウさんの目の前で事件を起こしたなんて言葉は、完全に自白ともとれる。

 キキョウさんは、騎士団長だ。

 怪物を一瞬で倒したところを見ていたのなら、どれだけの実力を持っているかはわかるはず。


 なのに、そんな彼の前で自白を行った。


 つまりこの自白が偽物か、キキョウさんからも逃げきるだけの自信があるということ。


 何より、彼の軽さに対して私はどう思えばいいのだろうか?



「…………なんで、そんなに軽く」

「え~、だって面白くね? 普段すまし顔して街守ってますって感じの騎士共が慌ててる顔って」

「…………そんな理由で」



 そんな理由で、あんなに厄介な怪物を街に放したのか?


 ロイドさんの言葉に、私は店内にいたお客さんたちの表情を思い出す。


 楽しそうに笑っていた表情は、怪物の登場のせいで恐怖と不安に歪んでいた。

 中には不安になって泣いている子供を、必死に宥めて泣き止ませようとしていた人もいた。


 だと言うのに、起こした本人はただ騎士たちの顔が愉快だったからという理由だけで起こした。


 …………ふざけているとしか思えない。

 騎士たちだって、暇じゃないのに。



「そんな理由で、こんな事件を起こしたんですか?」

「あと、単純に嫌がらせ。俺がだーい嫌いな奴に」



 私の言葉に、ロイドさんは歪んだ笑みを浮かべながらそう言った。


 大嫌いな相手に対しての嫌がらせ。

 今までのロイドさんの話からして、恐らくロイドさんが嫌いな人は騎士団に所属しているのかもしれない。

 嫌がらせの一環として騎士たちが関わっているみたいだし。


 …………もしかして、個人じゃなくて騎士団に対しての逆恨みとか?

 騎士団って、結構そういう逆恨みが多いらしいし。


 そう考えていれば、キキョウさんがロイドさんのことをジッと睨んでいることに気づいた。



「君がどういった理由でこの事件を起こしたかは、後でよく聞かせてもらうよ」

「え~、もしかして俺これから捕まる感じ~?」

「当り前だろう? 君が起こした事件は、面白かったとか嫌がらせの範疇を越えている。悪いが、君を拘束させてもらうよ」

「え~、や~だよっと!!」



 眉間に皴を寄せながら、一瞬でロイドさんへ距離を縮めるキキョウさん。

 そんなキキョウさんの行動を予想していたのか、後ろにバク転をして距離を離すロイドさん。


 正直、二人とも行動が早すぎて全く見えない。



「あ~、そうだ~。改めて、自己紹介しといたほうがいいよね~。俺、君っていう名前じゃね~し~」

「!?」

「俺の名前はロイドだよ~。ちなみに、【霧夜の民】の頭領やってるよ~」



 は?


 ロイドさんの言葉に、一瞬だけだけど周囲の時間が止まったような気がした。



 【霧夜の民】といえば、S級の犯罪者が頭領をやっているっていう犯罪者集団だったっけ?

 確か危険度とかやっていることとかいろいろな意味でヤバすぎる犯罪者集団で、他の国からもいろいろと警戒されている存在だったはず。


 …………あれ、ロイドさんの口から出るはずのないヤバい言葉じゃないかな?

 なんで、出てくるのかな?



「チビちゃん、遊びに来ない?」

「絶対に嫌です」



 ロイドさんの言葉に、無意識のうちに言葉を返してしまった。


 遊びに行くって、何処に遊びに行けと?

 絶対にそれ、小説で言うところの死亡フラグとかもろもろが立ってるんでしょ?

 絶対に行かない。







「え~…………じゃあ、いいや!! また、遊ぼうね~」

「は?」

「ッ、待ちなさい!!」



 ロイドさんががっかりした表情でそう言った瞬間、一瞬ポンっという音がその場に響いた。


 見れば、ロイドさんがいた場所にはロイドさんにそっくりな人形が落ちていた。





次回予告:シヴァとキキョウの会話

     紗彩がこの世界にやって来た理由はわかったが、まだまだ謎は残っている

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