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(240)デート➀

~紗彩目線~



 煉瓦で作られた道や建物が並び、いろいろなお客さんが行き来を繰り返している事で町は賑わっている。

 私は、この世界に来たばかりの時にセレスさんに連れられてやって来た街に来ていた。


 肉を売っている店。

 服を売っている店。

 その隣には、『手作りアクセサリー』の看板を掲げている店もある。

 あの頃にはなかった、ケーキを売っている店もある。



「…………どうした?」

「いえ、なんでもないです」



 そんな久しぶりな風景を見ている私の近くには、セレスさんではなくイアンさんが立っていた。

 首を傾げたまま私を覗き込むイアンさんに、私はなんでもないというために首を横に振る。


 そんな私の行動に、イアンさんはホッと安心したように息をついた。



「そうか…………じゃあ、行くか」

「はい」






 イアンさんに告白されて、それを断ってから三日が経った。

 断った日の次の日だと言うのに、イアンさんから『街に行かないか?』と誘われた。


 その言葉に驚いてしまったけれど、イアンさん本人は特に何ともなさそうな表情だったから、それを受けることにした。

 私もちょうど休みだったから、ていうのもあるんだけどね。


 そして今日、イアンさんと街にやって来た。



「サーヤ、手を握って良いか?」

「え?」



 とりあえずどこの店に行こうかと周囲を見回していれば、私の斜め前に立っていたイアンさんが私に左手を差し出してくる。

 思わず首を傾げれば、イアンさんも私と同じように首を傾げながらそう言った。


 …………なぜ、手を握るんだ?



「観光客が多いから、流されて逸れてしまう可能性が高い」

「……そうですね」



 続けられたイアンさんの言葉に、なるほどと納得した。


 確かに、今日は一般人にとっては休日にあたる日だ。

 まあ、日本で言うところの『日曜日』だね。


 そんな休日だからか、前に来た時よりも観光客や獣人の数が多かった。

 例えるとしたら、イベント中の有名の遊園地ぐらいといったところ。


 …………うん、確かに流されて逸れてしまいそう。


 ちょっと身長が伸びたとはいえ、私の身長はまだ180もいっていない。

 この中では、かなり小さい方だ。


 …………うん、流されて逸れる未来の自分が目に浮かぶ。


 スンッと、私の顔から表情が抜け落ちた気がした。

 漫画で言うところの、遠い目って奴だね。


 私はそう思いながら、イアンさんにお礼を言いながら彼の左手に自分の右手を重ねた。

 そうすれば、キュッと痛みを感じない程度の力で握り返してくれる。







「何処か、行きたい場所はありますか?」



 私がそう聞けば、イアンさんは頬を赤らめながら周囲を見回す。



「…………男でもお菓子を食べれる場所ってある?」

「え? ありますよ」



 まるで内緒話をするような小さな声で、イアンさんは赤くなった顔を近づけながら私に聞く。


 …………もしかして、恥ずかしくて赤くなっているのだろうか?


 そう思いながらも、本部を出る前にセレスさんにオススメされたケーキ専門店__お菓子屋さんの道順を思い出して頷いた。



次回予告:イアンさん、男でもケーキは食べていいんですよ?

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