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(237)告白の返事②


~イアン目線~



「ごめんなさい」



 目の前で頭を下げるサーヤに、すべてを言われなくてもその行動の意味が理解できた。





 俺は、俺自身の気持ちをサーヤに伝えた。

 本当は、ただ彼女を見ているだけでよかった。


 この気持ちが『恋』というものだと知って、俺はまず彼女と番関係になれるように本を使って調べた。

 それ以外にも、竜人騎士団内の番がいる竜人に話を聞きに行った。


 話を聞いてわかったのは、とにかく慢心せずに慎重に動いて自分の物にしろとの事だった。


 そもそも番関係というのは、簡単には切れないもの。

 だから番になるには、恋仲という関係になる必要があるらしい。

 自分の物にしたいと思うのなら、相手の心を完全に自分に向けさせる必要がある。



 …………俺は、サーヤが欲しいと思った。


 父さんや母さんはあんな最後になってしまったし、俺の異母弟にあたるジャックも恋愛という物のせいでかなり複雑な立場に立たされた。

 記憶が戻ったことで、かなり複雑な気分でもある。


 それでも、あの子が欲しかった。

 漆黒の髪と瞳を持った彼女は、俺にとっては黒色の宝石の様だった。

 欲しいと、子供のように思ってしまった。


 …………記憶が戻る前は見ることも恥ずかしかったが、今では逆に彼女をずっと眺めていたいとすら思っている自分がいる。

 フワフワとした気分だが、まったく不愉快に感じない不思議な気分だ。


 でも、事件が解決したことで俺達は母国に帰ることになった。

 それを知った時、目の前が真っ暗になった気がした。


 よくよく考えれば、そもそも種族も所属している国も違う以上、ずっとサーヤを眺める事なんてできないんだ。

 そう思っていれば、俺が話を聞いた騎士たちにアドバイスをされた。

 せめて、自分の気持ちだけでも伝えろと。


 …………正直に言えば、言っていいのかわからなかった。

 彼女がキキョウ団長の親戚だとわかっても、彼女自身は自分の立場に対して複雑な気持ちを抱いているように見えた。


 …………そんな時に、俺の気持ちを伝えていいのだろうか?

 伝えたことで、余計に彼女の重荷にならないだろうか?


 そう考えていれば、キキョウさんに後押しされた。


 次に会えるかわからない以上、せめて気持ちだけでも伝えた方がいい。


 そう言われて、俺は勇気をもって彼女に自分の気持ちを伝えた。



「…………それは、ダメだったということでいいのか?」

「はい」



 まあ、結果はダメだったが。



「イアンさんが、私のことを異性として好きなのは理解しています。でも、私はイアンさんのことをお友達としてしか見ていません。同じ想いを抱いていない以上、イアンさんの告白を受けるのはイアンさんに対して失礼なのでお断りさせてもらいます」

「…………そうか」



 サーヤの言葉は、純粋に嬉しかった。

 短時間とはいえ、俺のことをしっかりと考えてくれたから。


 …………でも、サーヤに断られて「じゃあ諦める」と言えるほどの想いでもない。

 サーヤを見ているだけで、俺の物にしたいと思ってしまうぐらいだから。

 彼女を見ているだけで、どんどん彼女が欲しいという想いが湧き上がってくる。


 そう思いながらも顔をあげるように言えば、何故か彼女は目を見開いて驚いていた。


 …………もしかして、ジッと見すぎたか?



「…………俺がサーヤのことが好きなのは、変わらない。だが、無理強いするつもりもないし押し付ける権利もない。…………それでも諦めることはできないし、俺の気持ちを否定してほしくない」



 彼女を諦めることはしたくない。


 かといって、彼女に一方的に想いを押し付ける気もない。

 …………一方的に押し付けるのは、母さんを殺したあの女と同じ行為だから。


 でも、彼女を諦めたくない。







 …………何人かの騎士たちのように断られてもうまく行動して相手を惚れさせるという手もあるが、そんなことを俺にできるのだろうか?


 できるかはわからないが、やってみる価値はあるだろう。

次回予告:告白の返事が行われている頃、セレスからとある情報を貰うシヴァ達

     彼らが貰った情報というのは?

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― 新着の感想 ―
[一言]  この世界にもハウツー本ってあるのですね( ・∀・)  やはりお断りされても諦めませんでしたね。お付き合い=いずれ結婚なので簡単には決められないでしょうから、紗彩が誰かとお付き合いするまで…
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