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(236)告白の返事➀


~紗彩目線~



「ごめんなさい」



 そう言いながら頭を下げる私の頭上で、イアンさんの驚く空気を感じる。



「…………それは、ダメということでいいのか?」

「はい」



 震えを抑えたような声で言うイアンさんに、私は頭を下げたまま肯定した。





 ジョゼフさんの言葉を聞いて、今の自分の気持ちをイアンさんに伝えるために彼を探した。

 イアンさんは、すぐに見つかった。


 私の表情を見て用事の内容を理解したのか、話していた竜人の騎士と別れてこっちに来るイアンさん。


 先ほどと同じ、来客用の居住スペースにやって来た私はイアンさんに告白の返事をした。



「イアンさんが、私のことを異性として好きなのは理解しています。でも、私はイアンさんのことをお友達としてしか見ていません。同じ想いを抱いていない以上、イアンさんの告白を受けるのはイアンさんに対して失礼なのでお断りさせてもらいます」

「…………そうか」



 私の言葉に、どこか悲しげな声音で言うイアンさん。

 そんなイアンさんに、私は申し訳ないと思う気持ちが込み上げてくる。


 ただ、私としても本心しか言っていないからこれ以外の答えを言うことはできない。


 言った通り、私はイアンさんのことは異性の友達としてしか見ていなかった。

 そもそも、異性として見れるほど一緒にいたわけでもないし。


 だから、告白を断るしかない。

 同じ気持ちを抱いていない以上、イアンさんと付き合うのは普通に失礼だし。


 何より、この世界じゃあ恋人関係というのは結婚を前提にしたものらしいから、余計に簡単に決めれることじゃないし。



「頭をあげてくれ」



 複雑に思っていれば、イアンさんに言われ頭をあげる。

 その瞬間、ドキリと心臓が跳ね上がった気がした。


 ギラギラ。

 イアンさんの目を表現するなら、そんな感じだった。


 なんだろう。


 例えるのなら、獲物を狙う肉食獣というべきだろうか。

 ちょっと潤んでいるような気がするけど、まさに肉食獣だ。

 お腹が減った飢えた肉食獣だ。


 …………恋愛の表現にある心臓のドキドキって、命の危機を知らせる物だったんだね。

 薫姉さん、私初めて知ったよ。

 あと、イアンさん。

 私を食べても美味しくありませんよ。


 通じないだろうけどと思いながら、真顔で私のことをジッと見るイアンさんに対して心の中で呟く。



「…………俺がサーヤのことが好きなのは、変わらない。だが、無理強いするつもりもないし押し付ける権利もない。…………それでも諦めることはできないし、俺の気持ちを否定してほしくない」



 真顔でいたかと思えば、眉をヘニョンと下げて言うイアンさん。


 …………なんだろう。飼い主にかまってもらえなくて寂しがっているペットの幻が見えた気がした。


 思わずそう思いながらも、なんとか思考を切り替えるようにする。

 さすがに、真剣な相手に対してこの思考ではいけない。


 …………別に否定するつもりもないけど。


 そう思っていると、まっすぐ見たいたはずのイアンさんの視線が右往左往していることに気が付く。



「…………これからも一緒にいられる時はいても良いか?」

「え?」

「…………俺は、貴方のことが好きだ。でも所属も国も違うし、会える時も少ない。それでも、この想いを伝えたことで貴方との心の距離が開いてしまうのは凄く悲しい」



 顔を赤くさせながらも真剣な表情で言うイアンさんの言葉に、私は驚いてしまった。


 私としては、別にイアンさんに告白をされても今まで通りに過ごすつもりだった。

 正直に言えば、気まずさよりも驚きの方が大きかったから。


 でも、告白を断られたイアンさんからすれば気まずさの方が強いと思っていた。


 驚きながらも、イアンさんの言葉に心のどこかでは嬉しいと思ってしまう。







「別にイアンさんが気にしないのなら、これからも今まで通りで大丈夫ですよ」

「そうか…………ありがとう」



 私の言葉に、イアンさんは安心したように優しく微笑んだ。



次回予告:イアン目線での物語

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