(230)告白②
~紗彩目線~
「あら、サーヤ。どうしたの?」
「あ、セレスさん…………」
どうすればいいのだろうか?そう思いながら歩いていれば、ちょうど私室から出てきてセレスさんに出会った。
「なるほどね…………あの子、やっと告白したのね」
私の表情で何かを悩んでいることに気づかれたらしく、セレスさんの私室に招かれ事情を話せばそんな反応が返ってきた。
え、なんでそんなやれやれと言いたげな表情なんですか?
私の予想としては、てっきり驚かれると思ったんだけど。
「え、知ってたんですか?」
「そりゃあ、あの子の目を見ていればね。というか、気づいてなかったのはサーヤとジャックくらいよ」
セレスさんが首を傾げながら言った言葉に、私は驚きを隠せなかった。
あの人の反応って、そんなにわかりやすかったっけ?
なんだか、いつも無表情だったり薄い反応しか浮かべているようなイメージだったんだけど。
「…………マジですか」
「マジよ。…………というか、気づいていなかったの?」
「…………そう言う目で、見られているとは思わなかったんです。イアンさんと私って、結構年齢差もありますし」
イアンさんは、確か180歳だと言っていた。
対して、私は25歳だ。
この世界ではそうでもないのかもしれないけど、私としてはお爺ちゃんとかひいお爺ちゃんとかそんなイメージを持ってしまうような年齢差だし。
それに赤ん坊として見られるかもしれないって言われたから、どうしてもそれだけ年齢差があると幼児性愛者とかの方に印象が持っていかれてしまう。
「? 恋愛に年齢差って、問題あるのかしら?」
「え?」
「ああ…………そういえば、サーヤは神人族だったわね」
神人の森から帰還した後、私の種族のことを説明したことでセレスさん達幹部は私が神人族であることを知っている。
だからこそ、私がこの世界の常識に疎い理由を理解してくれたらしい。
まあ幹部だけに伝えられた理由というのは、神人族であることはあまり公にするべきことではないらしいし。
「獣人もそうだけど、基本サーヤにとってはこの世界の住人は長寿よね?」
「はい」
「だから、基本的に恋愛にはあまり年齢とかを考えないの。番関係になった夫婦でも、500歳差とかも普通にいるし。まあ、獣人は獣としての生存本能が強いっていうのもあるけど」
セレスさんのなんでもないと言いたげな言葉に、私は開いた口がふさがらなかった。
セレスさんの説明では、番関係というのは私の感覚で言う結婚のような物らしい。
…………500歳差結婚とか、普通にいるんですか。
というか、500歳差でも大丈夫ってことか下手したら私とジョゼフさんでも大丈夫ということになるんですけど!!
いや、別にそう言う目で見たことはないけど!!
正直、私にとっての常識で考えればお巡りさん案件にしか見えないんだけど!!
そう心の中で叫びながらも、それを表には出さないように意識する。
正直、あの糞会社で無表情を極めていてよかったと思う。
「…………そういうものなんですか」
「そうね。まあまさかサーヤぐらいの年齢の子に恋愛感情を抱くとは思わなかったけど、サーヤって結構しっかりしているからもしかしたら何か響いたのかもしれないわね」
微妙な声で言っちゃったけど、セレスさんはそれを気にしていないのか微笑ましいと言いたげな表情と声で言った。
…………まあ、うん。
元の世界でも、国が違えば常識も違うことなんて普通にあったもんね。
とりあえず、私はそう考えて納得するように努めた。
ただセレスさんの話を聞く限り、私とイアンさんがそう言う関係になるのは年齢差を考えても特に問題点はないらしい。
しかも、イアンさんの恋心は私とジャック君以外は気付いていると。
…………そうなると、下手に断った場合あまりよろしくないのだろうか?
「…………私、どうすればいいのでしょうか?」
「そんなもん簡単よ。好きなら好きでお試しでお付き合いすればいいし、嫌なら嫌って言ってお断りよ」
「…………容赦ないんですね。というか、お試しって?」
「基本、番になる前にお試し期間があるのよ。まあ、サーヤで言うところの恋人って奴ね」
「ああ、なるほど」
…………正直、恋人期間って楽しむものってイメージがったんだけど。
なんだか、この世界だと結婚を前提に考えている感じなんだな。
というか、セレスさん何気に容赦ないな。
「だって性格とか生活とか思想とか…………まあ夫婦の営みでの思考とかの面でも相性ってものもある物」
「…………ああ、なるほど」
夫婦の営み…………なんかすごくサラッと言われたな。
まあ性癖とかもあるしね。
そういう点では、元の世界よりも意外にオープンなんだろうか?
「…………まあ、そんな感じで。お試しって、大切よ? お試しをせずに番関係になるのは、不具合が生まれた時に不幸になってしまうもの」
「…………シビアなんですね」
「そう? まあ、嫌なら振ってしまいなさい」
何でもないように言うセレスさん。
正直、お試しで付き合えとか言われると思ったんだけどな。
たぶんイアンさんの性格とか、私よりも熟知してそうだし。
「…………お試しで付き合えとは言わないんですね」
「アタシにとっては、サーヤの方が大切だからね。…………それにサーヤって、恋愛話ってあまり好きじゃないでしょ? 嫌なら、断っちゃった方がいいわよ」
セレスさんの言葉に、私は驚きで目を見開いてしまった。
…………気づいたの、セレスさん。
次回予告:セレスたちは、未だにサーヤが訳ありの幼女であると勘違いしていた




