(222)神からのギフト
~紗彩目線~
「サーヤ!!」
「目が覚めたんだな!!」
目を覚ましたら、心配した表情を浮かべているジャック君とイアンさんの顔が視界に広がっていた。
木々の匂いと花の匂い。
周囲を見回せば、私は湖の近くにいるようだった。
「大丈夫か?」
「…………ここは?」
「【神人の森】だ」
心配そうに私の顔を覗き込むイアンさんにそう聞けば、聞き覚えのない声が聞こえてきた。
声からして、女性の声だろう。
イアンさんの後ろを見れば、少し変わった服を着た女性が立っていた。
上は黒色の着物だけど、下は黒色の足袋に足首のところをキュッと締めた袴のようなズボンだ。
なんというか、小説の中に出てくる忍者のような服装だ。
そう思っていれば女性がこちらを見た瞬間、重くて冷たい空気を感じる。
「吾は、この御方と話がある。…………邪魔をするな、童共」
「!?」
「…………何かあったら叫んでくれ、サーヤ」
そう睨む女性に、思わず警戒してしまう。
ジャック君も毛を逆立てているし、イアンさんもジッと女性を睨んでいる。
どうするべきか?
そう思っていれば、イアンさんが私の方を向いて言う。
キュッと私の右手を握る彼の手は、プルプルと震えていた。
二人が私から離れたのを見て、女性は私の前に跪いた。
…………跪いた!?
「え、あの!?」
いや、なんでこの人私に向かって跪いているの?
レオンさんみたいな王族ならともかく、私は何処にでもいるチビな社会人ぞ?
少なくとも、跪かれるような立場にはいないはずだ。
神人族っていう、ちょっと特殊すぎる立場だけど。
「吾はレイア。この森と墓を守護する者。貴殿を待っていた、新たな神人族よ」
「ええと…………私は刺されたはずなのですが…………そもそもレイアさんは、どうして私を助けてくれたんですか?」
女性__レイアさんの言葉に戸惑いながらも、私のお腹が出血していないのに気づきそれを聞く。
なんで神人族であることを知っているのかわからないんだけど。
そう思いながらパーカーの首周りの部分を掴んで服の中を見ても、刺されたはずの傷跡も元々なかったように回復している。
あれ、私ってアルさんの妹さんに刺されたはずなんだけどな。
…………そう言えば、この世界には魔法があるんだったっけ?
「吾等は、貴殿たち『新たに生まれた神人族』を慈しみ、導くことを役目としている。それが、初代たちの願い」
「初代の願い?」
初代?
…………もしかして、薫姉さんや『ヨシキ・ヤマダ』っていう人の事だろうか?
そう思っていれば、レイアさんが説明してくれた。
レイアさんの説明でわかったのは、【神人族】には初代と第二世代がいるらしい。
薫姉さんと『ヨシキ・ヤマダ』は初代で、私は二代目の神人族らしい。
そしてレイアさんは『ヨシキ・ヤマダ』の娘で、【神人族】としては第二世代という扱いらしい。
…………なんか、サラッと凄い事を言われた気がする。
そしてこの【神人の森】は、薫姉さんがこの世界の神様が神人族に渡した【三つのギフト】のうち二つを用いて作ったらしい。
その【三つのギフト】というのが、三つの願いを神にかなえてもらえることができるらしい。
…………いや、マジですごい贈り物だな。
願いをなんでもと言われると、正直その代償の方が気になる。
無料ほど怖い物はないって言うし。
「…………そもそも、願いというのは? そんな無償で願いをかなえられるとなると、何らかの代償があるのでは?」
「そうだな…………すでに死んだ者を生き返らせることは不可能。そう言われている」
「…………そうですか」
死者蘇生は不可能。
ということは、元の世界に帰るのも不可能ってことか。
…………なんか死にましたって言われても、なんとも思えないな。
なんだろうな。
なんとなくだけど、わかっていたのかもしれない。
こっちに来てかなり経っていたのもあって、無意識のうちになんとなく帰れないんじゃないかって思っていた。
…………正直、親孝行どころか感謝も伝えていないからそこだけが後悔しているかな。
あと、母さんに謝ってないし。
「おや、ここにいた」
「え、キキョウ団長?」
後ろからそんな声がして振り向けば、安心したように優しげに笑うキキョウさんが立っていた。
あれ、レイアさん曰くこの森って関係者と関係者が許可した人以外が入った場合攻撃されるって言っていたけど、なんでこの人無事なわけ?
次回予告:意外な事実に驚く紗彩
お知らせ
私生活の方で忙しく、毎日一話ではなく二日に2・3話更新する感じになります
今後ともこの作品をよろしくお願いします




