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(221)死の真実

~紗彩目線~



「待って、いったいどういうことなの? 薫姉さん」

「…………そうね。まず、一から順番に教えていくわ。時間もないし」



 薫姉さんの説明は、とても分かりやすかった。


 神人族とは違う世界で死んでしまった人間たちで、人為的に殺されて遺体が修復不可能なほどに破壊された人間。


 つまり私がこの世界に来たのは、電車に轢かれてバラバラの状態で死んだから。

 薫姉さんも、すぐ近くで爆弾に巻き込まれて欠片も残らなかった。


 そして私はあの手の主によって、薫姉さんは爆発テロの爆弾魔。


 二人とも、人為的な理由で死んでいる。


 …………つまり、二人とも神人族になる条件を満たしている。



「…………じゃあ、私と姉さんがこの世界に来たのは」

「私は、この世界の神様によって拾われた。紗彩がこの世界に来たのは私と血縁関係があったのと、紗彩が死んだ駅が私が死んだ駅でもあったから。…………恐らく縁ができていたんだと思う、この世界と」



 静かに説明する薫姉さん。


 【縁】というと、縁切り神社の【縁】ぐらいしか出てこない。


 え、縁を切っとけば私ここに来なくても良かったって事?

 それなら会社にいる糞どもの縁ごと、有名どころの神社で切っとけばよかったわ。



 思わずスンッと真顔になってそう思う。



「そしてその縁を辿って、あの手の主は紗彩をこっちの世界に引っ張り込むことに成功した。紗彩、夢の中でも見たでしょう? 落ちるまで、不自然なほど人がいなかった。恐らく、一時的にこっちの世界とあっちの世界をむりやり繋げたから、不自然な風になったんだと思う」

「じゃあ、すぐに人が戻ってきたのは」

「電車が来る時間と線路に落ちた時の紗彩の健康状態から推測して助からないと見込んだから、縁をくっつけたまま元に戻した。…………神様の話じゃ、たとえ神であろうと異世界の空間を長時間繋げることはできないらしいし」



 つまり、何が言いたいか?


 その手の主とやらを一発ぶんなぐってやろうか?

 というか、殴らせろ。


 腕力がないかもしれないけど、金属バットあたりを用いればきっと痛いはず。



 そもそもの話、意味が解らない。

 理不尽すぎだろ。


 薫姉さんとの血の繋がりなんて、家族なんだから仕方がないじゃん。

 あの駅だって、糞会社に行くのに必要なのに。


 なのに、なんで殺されなきゃいけないわけ?


 そう怒りに震えていれば、薫姉さんのある言葉を思い出して首を傾げてしまった。



 【時間がない】



 時間がないって、どういう意味なんだ?


 そもそも、ここはいったい何処なのだろうか?

 ここにずっと一緒にいることはできないって事?


 それなら、薫姉さんはどうなるの?

 もう会えないの?

 やっと会えたのに。



「時間がないって、どういう意味なの?」

「そのままの意味…………紗彩、今あなたは死にかけているのよ。……………………早く帰りなさい」



 薫姉さんがそういった瞬間、和室の壁がグニャリと歪み始めた。

 ドンドン原型から離れていく。


 まるで、生クリームをかき混ぜているような歪み方だった。


 なんなんだ?


 そう思っていれば、薫姉さんに強い力で後ろに押される。

 そのまま、背後にあるであろう障子にぶつかるはずだった。



 でも、そんな痛みは襲ってこない。





 …………というか、死にかけている?





「…………ああ、そっか」




 お腹に広がる真っ赤な液体と耐え難い痛みと熱さに、私は思い出した。




 ____私、アルさんの妹さんに刺されたんだった。


 そう思ったけれど、私を包むように広がっていく暗闇に身をゆだねた。



次回予告:紗彩は知る

     自分自身が、叔母によって助かっていたことを

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