(216)【神人族】の真実➀
~シヴァ目線~
ついた時には、すべてが終わっていた後だった。
「落ち着くんだ、シヴァ団長」
「大丈夫だ…………あの森が、神人族である彼女を傷つけることはない」
あまりの悔しさに拳を力強く握っていれば、隣に立っているキキョウ団長にそう言われる。
何が大丈夫なのかはわからない。
そもそも、サーヤが神人族だということ自体が初耳だ。
…………そのサーヤは、アルの妹の話では刺された後にジャックとイアンと共に【神人の森】に飛ばされたらしい。
【神人の森】あの墓守がいるという森。
よりによって、簡単には入れないところを。
この女の親を尋問したところ、ここのところあった神隠し事件はすべて奴らが裏で手を引いていたらしい。
…………【神人の森】に入ったまま行方不明という情報は、完全に嘘の情報だったということか。
【神人信仰】が根強いとはいえ、嘘の情報を本当のように流すとはな……。
「…………どうして」
そう思っていれば、拘束したまま床に放置していた女__アルの妹がそう呟いた。
「どうして、あの子ばかりを優先するのよ!! 私は、神人族の巫女なのに!! 私が愛されるべきなのに!! あの子ばかり!!」
「違うよ」
女の支離滅裂な言葉にその場にいた全員が眉を顰めていれば、女の言葉をキキョウ団長が否定した。
キキョウ団長はどこか悲しげな表情をした後、キッと女を睨みつける。
「君は、神人族ではない。ましてや、巫女でもない。神人族とは、神ではないからね。巫女も存在しないよ」
「何を言っているのよ!! 神人族って、日本人のことでしょ!! 私だって、日本の女子高校生だったのよ!! それなら、私だって神人族よ!!」
二ホンという国がどこの国かはわからないが、キキョウ団長の表情は睨みから憐れんでいるような表情に変化する。
心底可哀そうだ。
そう言いたげな表情で、転がっている女を見ている。
「君はいったいどうやって死んだんだい?」
「は?」
キキョウ団長の言葉に、その場にいた全員が同じ気持ちになっただろう。
何故、そこで死因が出てくるんだ?
そもそも、この女の言葉が本当なのだろうか?
すでに死んでいるというのなら、アルの妹であるこの女はいったい誰なんだ?
「私は…………階段から落ちて当たり所が悪くて死んだのよ」
「へぇ、そうかい。やはり君は神人族ではないね」
「はあ!?」
階段から落ちて死んだ。
そんな女の言葉に、即座にキキョウ団長が否定の言葉を言う。
そして女はといえば、そんなキキョウ団長の反応に驚きの表情を隠せないようだった。
意味が解らないことだらけだった。
サーヤが神人族。
いや、獣人や精霊や魔族や竜人のどれにも当てはまらない身体的特徴だった。
おそらくキキョウ団長の言葉は正解なのだろう。
なんで、この人がそれに気づいたのかはわからないが。
だが、この女の見た目は明らかに精霊族だ。
サーヤの姿とは、似ても似つかない。
なぜ、神人族だと思ったんだ?
「…………どういう意味なんだ?」
「彼女は、神人族となる基準を満たしていない」
キキョウ団長の言葉に、俺はもういろいろと理解できなかった。
そもそも、神人族に基準なんてあるのか?
次回予告:キキョウが話す神人族の真実
その真実は、元の世界に戻りたいと願う紗彩にとってはとても残酷すぎる内容だった
 




