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(206)異母兄弟

~ジャック目線~



「異母兄弟? 俺とイアンが?」

「ああ」



 目のまえにいる団長の言葉に、俺は正直に言えばどうでもよかった。




 第一執務室についた俺達を、団長たちが真剣な表情で待っていた。

 正直、何を言われるんだと思ったけどその内容はすごく意外なものだった。


 異母兄弟ということは、イアンの父親もまた切り裂きジャックということだろう。

 恐らくだが、殺されたと思われていた幼い息子と言うのがイアンってことだろう。



「…………つまり、こいつの父親が切り裂きジャックということですか?」

「ああ。すでに、本人から確認も取れている」



 確認の意味で団長に聞けば、団長は重々しく頷いた。



「…………俺は」

「だから、なんですか?」



 団長の言葉に何かを言いかけたイアンの言葉にかぶせるようにして、俺はそう言った。


 イアンには悪いが、俺にとっては事実を知ってもその程度にしか思えなかった。

 たぶん団長があれだけ重い空気を背負っていたのは、今後の俺とイアンの関係のことを心配しているんだろうけど。


 正直、俺とイアンの関係は俺の一方的とはいえ良いとは言えないから。


 でも本音を言えば、別に俺にとってはどうでもいい事だった。


 俺にとって、家族は獣人騎士団の皆だ。

 先輩の騎士たちは兄貴みたいな存在だし、団長たちは恩人でもあり親の存在でもある。

 新たに、サーヤっていう妹のような存在もできた。


 …………前の俺だったら取り乱すんだろうけど、今の俺としては「で?」としか思わない事だった。


 俺でも、この部分に関しては成長したなと思う。

 前まで必要とされなくなることを恐れていたのに、今では全くそんなことはない。


 騎士団の皆は俺を見捨てないって、あの医務室の一件で痛いぐらいわかったからな。


 あの後、先輩方に本当のことを言ったらおもいきり殴られたし、それからというものちょっと何かをするたびに大げさに褒められるし。

 サーヤはそれを変な目で見るだけで、全然助けてくれないし。


 それに、家族と言う存在がいるのはイアンだって同じだ。



「俺には、すでに獣人騎士団と言う家族がいます。それは、イアンだって言えます。別に、今更異母兄弟だとわかっても特に何も変化なんてないでしょう?」



 俺がそう言った瞬間、隣から視線を感じた。

 たぶん、イアンの視線だろうけど。


 そう思いながらも、それを無視してドアの前まで歩く。



「失礼します」



 俺はそう言いながら礼をして、第一執務室を出た。


 …………そもそも、俺とイアンが普通の兄弟のように仲良くなるなんて無理な話だろう。


 俺の母親は、イアンの母親を殺した。

 そして、イアンから優しい父親を取り上げた。


 それだけじゃない。


 あいつの記憶喪失という状態は、目の前で母親を殺された影響だろう。

 …………俺の母親は、それだけイアンに傷を与えた。


 いつ治るかもわからない、心の傷を。


 そんな傷を与えた存在と同じ顔をした奴なんて、あいつにすればよくて復讐対象だろう。







 なんで、こう上手くいかないんだろうな。




次回予告:再会する親子

     イアン、記憶を取り戻す

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