表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

204/278

(202)イアンの赤面②

~ジャック目線~



 その声を聞いたのは、完全に偶然だった気がする。



 なんでか、第一執務室に呼ばれて廊下を歩いていた。

 それで、どこからか慌てる声が聞こえてきた。

 片方がサーヤの声だったから心配になって、そこに向かった。


 そこで見たのは、いけ好かないあいつがサーヤを背中から抱き締めているところだった。

 しかも、サーヤの方は嬉しそうというよりは慌ててるし。


 …………あれ、これって先輩騎士が前に教えてくれた『セクハラ』って奴?

 確かセクハラって、異性が行う性的嫌がらせって奴だろ?


 喜んでいる感じがないから、これもセクハラに該当するのかな?



「…………何、してんだよ」



 とりあえずよくわかんないし、困っているんなら助けた方がいいだろうと思って声をかけた。


 二人とも驚いているけど、とりあえずイアンは今すぐサーヤから離れろと叫びたい。

 けど、叫ばない。


 サーヤがビックリするかもしれないし。



「…………受け止めた」

「は?」



 あいつが無表情で言った言葉に、俺は困惑しかしなかった。


 …………何が言いたいんだ、こいつ?


 だいたい、受け止めたってなんだよ。

 サーヤが空から降ってきたとでも言いたいのかよ。


 ………………こいつのこういうハッキリとしないところが、俺は嫌いだ。

 無表情で何考えてるかわかんないし、何か言いかけても結局黙るし。


 何ではっきり言わないのか、理解できない。

 判断だって遅いし。


 そんな俺がイラついたことに気がついたのか、サーヤが慌てる。



「えっと、階段から落ちた私を受け止めてくれたんです」



 サーヤの言葉に、俺は純粋に驚いた。


 え、こいつ考えずに動くの?


 正直、俺はこいつがサーヤを助けたことに驚きしかなかった。

 判断は遅いし、行動に起こす時だって色々と考えた後にゆっくり動く感じだし。


 なんていうか、前に会ったことのあるナマケモノの獣人みたいな奴だったはずだ。


 それなのに、サーヤを助けた?


 あり得ないと思ったけど、サーヤは嘘をついているようにも見えない。



「そっか……………………ありがと」

「!? …………ああ」



 俺がそう言えば、あいつは驚いた声で言った。


 なんだよ、俺がお礼を言わないとでも思ったのかよ。

 お礼ぐらい、俺だって言える。


 それにこいつがいなきゃ、サーヤは階段から落ちて怪我してた。

 俺ら獣人とは違って、サーヤの体は柔らかい。

 下手したら、大怪我を負っていた可能性だってある。


 なら助けたこいつは、サーヤの恩人だ。

 妹分の恩人なら、兄貴分である俺だってお礼を言う。


 何より、ジョゼフ先生も言ってたからな。

 何かしてもらったら、どんな小さなことでもお礼をちゃんと言うって。


 ただ、それとこれとは別だ。


 ただ助けただけなら、セクハラじゃない。

 でもいくら恩人だからって、ずっとサーヤに抱きついていいわけじゃない。


 だいたい恋人じゃない異性が抱きついたら、周囲に色々と勘違いされるって先輩騎士も言っていた。


 勘違いは、人によっては迷惑にしかならないからな。


 サーヤを変な風に勘違いされるわけにはいかないし。



「でも、サーヤからとっとと離れろ」

「…………ああ」



 俺の言葉に、どこか残念そうに言うイアン。


 …………何で、残念そうなんだよこいつ。


 そう思った瞬間、思い出した。


 サーヤはとても柔らかくて、不思議と甘い匂いがする。

 少なくとも、俺ら獣人やこいつみたいな竜人にはいないタイプだ。


 そんで先輩騎士曰く、自分と違うと変な意味で興奮するらしい。

 それはクールな奴ほど、興奮するとヤバイらしい。


 興奮がなんの興奮なのかはわからないけど、本能が強くなるって意味なのだろう。

 …………サーヤが獲物として食われるのか!?



「何、しょんぼりしてんだよ。このムッツリ野郎」



 そう言いながら、奴を睨む。


 確かにサーヤは柔らかいから、食うときもそんなにバリバリ顎に力を入れて食わなくてもいい。


 …………愛想のない奴のことをムッツリ野郎って言うけど、まじでこいつもそうだな。

 先輩騎士に言われなきゃ、俺もわからず警戒していなかった。


 …………サーヤは、俺が守らなきゃ!!











「…………ムッツリ野郎じゃない。俺は、イアンだ」

「…………やっぱ俺、お前のこと嫌い」



 名前間違いで言ったんじゃない!!




次回予告:イアン目線での物語

     彼は、ただただ混乱していた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ジャックくん、イアンくんのことムッツリ野郎って… でも、真っ赤になってる時点で絶対違うよね。 イアンくんはジャックくんにお礼を言われて驚いていたみたいだけどよかったね! サーヤにもけが…
[一言]  別の意味で誤解が!( ´゜д゜`)アチャー  そしてジャック、セリフは間違ってないけど内容(本人が認識してる意味)は違うよっていう……( >Д<;)
[一言] なんだ、ジャックの勘違いでしたか…恐いと言って御免ね、ジャック。こんなにイアンの事が嫌いで…異母兄弟と知って大丈夫かな…続き楽しみに待ってます。頑張って下さい。応援してます。(*^▽^)/★…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ