(200)騎士・グレイ
~紗彩目線~
「…………ねぇ、おチビさん」
「え?」
階段を降りようとしていれば、そう後ろから声をかけられた。
振り向けば、そこにはうなじまでの銀髪の赤い瞳の男性が立っていた。
前髪で隠れていないもう片方の目が、私のことをジッと見ている。
…………誰だろう、この人。
尻尾の形状からしてもなんの獣人かはわからないし、今までこんな人に会ったこともない。
それに「おチビさん」ってことはあちら側も私のことは知らないのだろう。
ということは、ここに来たときの自己紹介の場にはいなかったのかもしれない。
銀髪の人って、シヴァさん以外にはあんまり見ないし。
「…………初めまして、私はグレイと言います」
「ええと、紗彩です。初めまして」
自己紹介をした目の前の人 グレイさんに私も名乗れば、またジッと顔を見られる。
…………なんなんだ、この人。
「…………」
「…………あの、何か?」
「…………貴方は、太陽の光なのですかね?」
「は?」
グレイさんの言葉に、私は思わず驚きの声をあげてしまった。
…………太陽の光?
誰が?
私は人間ですけど。
私、日本人は卒業しましたけど人間を卒業したことはありませんけど!!
そもそも、太陽の光って…………そういえばキキョウさんの私の呼び方も『陽の子』だったっけ?
というか、そもそも太陽の光って何?
日本の国旗は日の丸だったはずだけど、この世界では関係ないはずだし。
「それとも月の光か…………まあ、影ではなさそうですね?」
「あの…………言っている意味が分からないのですけど」
「ああ…………いえ、こちらの話ですよ」
「…………そうですか」
グレイさんがブツブツと言うけれど、その内容は意味が解らないものばかりだった。
太陽の光とか月の光とか影とか、いったい何の意味があるのだろうか?
そう思っていれば、グレイさんが頭を下げた。
「…………では、また」
そう言ったグレイさんは私に背を向けて歩き出した。
…………なんなんだろう、この人。
そう思いながら階段を降りようとした瞬間__
「…………彼女がいたから、シヴァお坊ちゃんは変わったのでしょうね」
そんなグレイさんの言葉に驚き振り返ろうとすれば、ズルリと足が滑ったのを感じた。
あ、ヤバい。
落ちる。
次回予告:階段から落ちる紗彩
その先にいたのは__




