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(196)切り裂きジャックの処遇①

~シヴァ目線~



「やあ、シヴァ団長。少し、いいかい?」

「…………何だ、キキョウ団長」



 第一執務室でセレスたちからの報告を聞いていれば、ロルフ副団長を連れたキキョウ団長が入ってきた。


 そんな二人の登場に、何故かノーヴァが睨むようにキキョウ団長を見ている。

 そんなノーヴァに、キキョウ団長はと言えば微笑んだままだ。


 …………この二人の間に何かあったのか?



「切り裂きジャックの身柄についてなんだけど、可能なら我が国に渡してほしいね」

「可能なら、なんですね」



 キキョウ団長の言葉に、アルが訝しげに言う。


 確かに、いろいろとおかしい。


 竜人騎士団は、自国で起こった犯罪や竜人を被害者とした犯罪に対してかなり厳しい。

 それと同時に、同じ竜人からは殺人犯が出ることを最も忌み嫌っている種族とも言える。


 切り裂きジャックは、竜人だ。

 理由や背景はどうであれ、短期間でかなりの人数の被害者を出した男だ。


 こんなあっさりと引き下がる物なのか?


 そんな俺達の想いがわかっているのか、キキョウ団長が笑い、ロルフ副団長は気まずげに俺達から視線を外す。



「正直、私達の国ではこれといった被害はないからね。上層部のプライドからの発言だよ。君の国の法律と被害を考えれば君たちの国での処罰の方がいいだろうと思うよ。ただ、彼の背景を教えてほしい。彼に何があったのかを。その理由で、私達は退くよ」



 真剣な表情で言うキキョウ団長に、俺は黙って切り裂きジャックの調書を渡した。


 正直、あの男の背景を口に出すのはいろいろとキツイ。

 しかも、母子の死亡の部分においては同じ獣人族がやったとは思いたくない所業だ。


 まだ20歳という幼い命を、母親と共に殺した。


 獣人族とは思えない、同胞が犯したとは思いたくない残酷な所業。


 正直、ジャックの母親__女の方を先に死刑にするべきという声もかなり多い。

 まあ、それもそうだろう。

 女があんな恐ろしい行動に出なければ、切り裂きジャックは生まれなかったのだから。


 …………まあ、それと同時にジャックもこの世には存在しなかっただろうが。


 世の中、上手くいかないな。



「なるほどね。…………彼がこの国の住人であれば、何か変わっていたのかもしれないね」



 調書の紙を読み終わったのか、キキョウ団長はそうしみじみと言い、ロルフ副団長は顔色を真っ青になっている。


 確かに気分が悪くなる調書だが、そこまで顔色が悪くなる内容だろうか?

 正直、嫌でも事件に関わらざるを得ない副団長ならば慣れていると思うのだが。



「…………なあ、聞いていいか?」

「なんだ」

「確かに、母子の死亡の現場はそれで合っているんだよな?」

「ああ」



 顔色の悪いロルフ副団長が、ありえないと言いたげな表情を浮かべている。












「…………イアンがいた場所と、その母子の死亡した場所が同じなんだ」

「…………は?」



 ロルフ副団長の言葉に、俺は思わずそんな声を出してしまった。




次回予告:切り裂きジャックにとある確認をする幹部一同

     そこで、喜べばいいのかわからない真実を知る



死んだままの方がよかったのか


記憶がないまま、殺人犯となった父と再会するべきなのか




____どちらの方が、幸せだったのだろうか?

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