(195)竜人騎士団団長
~ノーヴァ目線~
大嫌いなあいつが来た。
あいつ__アリシアとかいう女は、副団長の妹らしい。
俺は、あいつが大嫌いだ。
セレスのこと悪く言うし、いつも副団長や団長のことをイライラさせる。
だから、大嫌いだ。
「おや、どうしたんだい? マツバギクの子」
廊下を歩いていれば、キキョウ団長に会った。
…………最悪。
キキョウ団長。
竜人騎士団の団長。
…………俺が物凄く苦手としている人。
「…………なんでもない」
「おや、そうかい」
俺の言葉に、キキョウ団長は首をかしげながらそう言った。
『マツバギクの子』
なんでか、俺はそう呼ばれている。
正直、なんで花なんだろうとしか思えない。
団長は『白銀の子』だし、副団長は『黒の子』だし。
セレスは『自由の子』だし。
なんで、俺だけ…………。
…………そういえば。
「…………ねえ」
「なんだい?」
「…………あんたは、あの子の事どう思ってるの?」
「あの子?」
「…………サーヤの事」
「陽の子の事かい?」
キキョウ団長のサーヤを見る目は、俺やロルフ副団長たちを見る目と少し違う。
なんて言えばいいかわかんない。
ただ、漠然と違うと思う。
ロルフ副団長は、大人が子供を見守る感じの目。
…………まああの人、顔に似合わず子供大好きだからね。
イアンって子は、ジョゼフいわく『恋情』を抱いている目だって。
気付いてないのは、たぶんジャックとサーヤだけだね。
ジャックは、今まで実母の異常な愛情と悪意しか見てこなかったから、たぶんそれが恋情の目だってことがわかんないんだと思う。
サーヤは…………なんなんだろう?
イアンのことをそういう対象として見てないのかな?
でも、そんな二人とは全く違う視線なのがキキョウ団長。
だから、聞いた。
「…………そうだね。私の長年の悲願を達成するのに必要な子……かな」
…………まさか、こんな答えが返って来るなんて思わなかった。
嫌なことなのかと思った。
でも、キキョウ団長の目はとても寂しそうで悲しそうだった。
なんで、そんな目をするの?
サーヤに警戒されているから?
…………よくわからないけど、これだけは言っておかなきゃ。
「…………あんたが、サーヤに何を思っているのかは知らない。…………でも、サーヤを危険に晒すようなら…………あの子を傷つけるなら俺が許さない」
「…………別に危害を加えるつもりはないよ」
俺の言葉に、キキョウ団長は寂しそうな表情を浮かべた。
いまいち信用できないけど、サーヤが大切なのは俺だけじゃない。
セレスも大切。
団長も大切。
ジョゼフも大切。
副団長も大切。
俺も大切。
だって、ありのままのセレスを受け入れてくれたから。
次回予告:一週間後、とうとう行われる切り裂きジャックの処遇についての会議
ロルフは、切り裂きジャックの過去に違和感を感じる




