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(192)転生者疑惑

~紗彩目線~



 まるで嵐が去るようにして、女性は去って行った。

 

 …………いや、あの人の場合は嵐じゃなくて竜巻か。


 疲れ切ったアルさんの表情を見て、私は思わずそう思った。



「…………なんだか、いろいろすみません」



 アルさんは疲れ切った表情を浮かべたまま、頭を下げた。



「いや、大丈夫だ」

「お疲れ様です、アルさん」

「ありがとうございます、サーヤ。…………大丈夫ですか?」

「…………なんというか、嵐のような人ですね」



 シヴァさんと私の言葉に、アルさんが苦笑しながら聞いてきた。

 思ったことを正直に言えば、ハハッと力なく笑うアルさん。


 そんな彼の表情から、かなり苦労していることがわかる。

 …………まああれだけ思い込みが激しいんじゃあ、アルさんも苦労するだろう。


 まさか、セレスさんを女性扱いするとは思わなかったけど。

 …………まあ、確かに見えなくもない。


 髪が長くて、体もシヴァさんたちと比べれば細いし。

 セレスさんの声って男性にしては高い方だから、声の低い女性と思われたのかもしれないし。


 そう思っていれば、アルさんが女性の今までの行動を話し始めた。


 自分のことを【神人族の生まれ変わり】と自称したり。

 アルさんのことを悪役に仕立て上げたり。

 その反面、実兄であるアルさんのことを異性として見たり。

 実兄であるアルさんに取り入ろうとしたり。

 乙女ゲームだとか、なんとかおかしなことを言ったり。



「まあこんな感じで、愚妹は妄想を当たり前と言いたげに話すので信じなくていいですからね」

「あ…………はい」



 アルさんの言葉に、私は頷くしかなかった。


 というか…………うん。


 明らかに、アルさんの妹ってあれでしょう?

 ライトノベルの悪役令嬢ものに出てくる、勘違いヒロインって奴じゃないの?

 しかも、この世界を乙女ゲームだと誤認しているタイプの。


 そうじゃなきゃ、アルさんのことを『悪役の攻略対象』としては見ないはずだし。


 おおかた、アルさんだけが見た目が違ったから養子だと思っているのかもしれない。

 

 養子の子供が虐げられて、将来には悪役になる。

 わあ、乙女ゲームの悪役にありそうな設定だわ。


 しかも攻略対象として見ているということは、乙女ゲームに出てくる『レアキャラ』とか『隠れ攻略キャラ』とかだと勘違いしてそう。


 …………これ、厄介なことになったな。


 勘違いヒロインだった場合、私が日本人だとバレるわけにはいかないし。

 何しろ勘違いヒロインと言えば、いじめてこない悪役令嬢(中身は転生者)に対していじめを捏造して断罪しようとする生き物だ。


 バレた場合、何をしてくるかわからない。

 私だけが迷惑を被るのならいいけど、シヴァさん達にまで被ったら困る。

 特に、ただでさえストレスを感じているであろうアルさんとか。


 …………何とか、うまく排除できないかな。

 正直、セレスさんを悪女扱いしてすごく感じ悪いし。


 たぶん、あの人の中ではセレスさんが悪役令嬢のような立場なんだろう。

 そうなったら、彼に対して強行突破してくる可能性もあるし。


 …………はあ。


 キキョウさんの件に、変な神隠しもどきに、勘違いヒロイン。


 なんで、一気に問題が増えるのよ。


 キキョウさんは…………もう放置でいいかな。

 正直、あの人が一番謎すぎて怖いし。










次回予告:シヴァにとってのアルの妹


お知らせ:しばらくの間、一日に複数話を更新します



[10]~料理の腕前①~


レオン「そう言えば、サーヤは料理ができるんだな」

紗彩「前にいたところでは、私が作っていたので」


何故か、キッチンにいるレオン。

そんなレオンに、(なんでいるんだろ、この人)と思いながらも言わない紗彩。


何故かって?

ツッコんだら、明らかに面倒くさそうだからである。


レオン「なるほどな。俺も作れるぞ」

紗彩「え、そうなんですか?」


ドヤ顔で言うレオン。

そんなレオンに、(生卵を電子レンジに入れて爆発させそうなのに)と失礼なことを思う紗彩


レオン「おう。鍋を爆発させたりしないぞ」

紗彩「…………なんで、鍋が爆発するんです?」

レオン「ん? 姉上はやったぞ」


なんでもない事のように言うレオン。

そんなレオンに、(え、姉いたの?)と思いながらも頭が追い付かない紗彩。


紗彩「…………爆発を?」

レオン「爆発を」


レオンの言葉に、紗彩は思考を放棄することにした。

そして料理の仕込みをしているラーグの方を向く紗彩。


紗彩「ラーグさん、この国では料理って爆発物なんですか?」

ラーグ「頭、大丈夫かお前。親父、呼ぶか?」


紗彩の言葉に、ラーグは彼女のことを本気で心配した。


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― 新着の感想 ―
[一言] サーヤとアルさんご苦労様です。勘違いヒロインと言う名の竜巻でしたね、竜巻は、誰も止めることが出来ずに、通りすぎるのを待つしかないんです。愚妹は、竜巻そのものでした。ところで、どうやったら鍋が…
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