(185)【神人の森】②
~シヴァ目線~
サーヤを緊急会議に連れてきた時は、ロルフ副団長に睨まれたが何も文句は言われなかった。
おそらくだが、キキョウ団長に何か言われたのだろう。
そう思いながらも会議を進めれば、意外なところで意外な名前が出た。
【神人の森】
…………よりによって、あの調査が面倒な所か。
墓守の奴はかなり過激な思想を持っているし、あの神人信者の奴らはウザいんだよな。
そう思っていれば、隣に座っているアルが微妙そうな雰囲気を纏っていた。
…………あいつにとっても、あの土地はあまりいい記憶がないからな。
正直、俺もあまりいい記憶がないが。
「神様って、本当にいるんですか?」
「いないよ」
「え?」
そう思っていると、サーヤとキキョウ団長が会話している時にあることに気づく。
サーヤは、どこかキキョウ団長に対して緊張しているようにも見える。
…………いや、これは警戒か。
何故キキョウ団長に警戒するのかと考えるが、一週間前のロルフ副団長の態度を思い出せばなんとなく理解できた。
事前に言っておいたがさすがにあんなふうに露骨な態度で接されてしまえば、その上司であるキキョウ団長のことも警戒してしまうのだろう。
何しろ、キキョウ団長はロルフ副団長のようにわかりやすいわけではないからな。
サーヤは頭が良い分、そう言った思考が読めない奴を苦手としている部分も見られる。
だからこそキキョウ団長がサーヤを騎士団から遠ざけようと画策したりするのかも、とか考えていそうだな。
「…………だが、最近では本当に『神がいるのではないか?』なんていう噂もある。実際、森の中に入った者たちが何名か行方知れずになっているらしいからな。一部は、『神隠しだ!!』って言って震えている」
気づけば、話し合いはそこまで進んでいた。
まあ正直『神隠し説』を推す奴らって、あの家の奴らとその金魚のフン共ぐらいだろう。
同じことを思っているのか、アルもどこか嫌そうに顔を歪めている。
顔は笑顔だが。
まあこの神隠しが人為的なものであろうとなかろうと、竜人族に被害が出た時点で俺達は動くことになる。
なんらかの妨害は受けるだろうが、俺の勘的には十中八九あの家が関わっていそうだな。
…………あの女、苦手なんだがな。
次回予告:ロルフ目線の物語
彼は、考えを改めるべきかと悩む
[8]~怪異おばあちゃんは、獣人だった~
何故か、竜人騎士団の三人組に日本の怪談を教えることになった紗彩
ロルフ「ご婦人の怪異もいるのか」
紗彩「そうですね。ターボ婆さんは、時速100キロで走るおばあさんの怪異です」
イアン「…………そのお婆さんは、獣化したシヴァ団長ではないのか? あの人は、それぐらい早いだろう」
イアンの言葉に、思わず吹き出しそうになる紗彩。
紗彩「ターボ婆さんの類似系に『ジャンピング婆さん』というのもあるらしいですよ。此方の場合は、飛び跳ねて頭上を通り越すようですが」
キキョウ「なるほど、そのご婦人はウサギの獣人なんだね」
紗彩の言葉に、『健康なのは良いことだね』と言いながらも笑うキキョウ。
紗彩(この世界じゃあ、身体能力が高い怪異って獣人扱いされるのか)
三人の言葉に、ふとそう思った紗彩であった。




