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(180)異常事態

~紗彩目線~



 キキョウ団長の謝罪を聞いた後、合同鍛練が始まった。

 とは言っても、その空気は普段の鍛錬のような緊迫した空気というよりは非常に気まずくい居心地の悪い空気となっている。


 そしてやはりと言うべきか、いまだに視線を感じる。

 さっきまでのジロジロと見られるようなものではないけれど、チラチラと見られている。


 …………まあ、明らかにこの中では私は異物だろうから見るのも仕方がないんだろうけど。



「堂々としていればいいんだよ」

「え?」



 気まずさから俯いていれば、隣で立ちながら鍛練の試合を見ていた犬耳の騎士に言われた。


 そこで気づいた。

 私の周囲にいるのは、みんなあの時負傷していた騎士たちだった。



「あんなに、チラチラ見なくていいと思うんだけどね。まあ、サーヤは可愛いからな」

「おーおー、ジャックの容赦のなさ。あいつも、竜人共にキレてたからな」



 タレ目の猫耳の騎士の言葉に笑いながら、髭面の犬耳の騎士も愉快そうに言う。


 彼らの影から見れば、ジャック君が隙を与えず一方的に鍛練相手を叩きのめしている。

 犬耳の騎士の話では、反則にならないギリギリのラインを見極めながら行っているらしい。


 …………ジャック君、あなたいつの間にそんな難しい事出来るようになったの。


 そう思うと同時に、ここに来てかなりの時間が経ったんだとも思う。

 …………もし元の世界に戻れたとしても、戻るのが辛くなりそう。



「何、考えているんだよ」



 しみじみと思っていれば、隣にいる犬耳の騎士がそう話しかけてきた。



「…………まあ、無理に聞き出そうとはしねぇよ。でも辛くなったら、俺らでもジャックでも団長たちでもいいから言えよ? 貯めこむのが一番負担だからな」

「そうそう。ジャックもそうだけどよ、サーヤもため込むタイプだよな。ガス抜きはしといたほうがいいぞ」



 ため息を吐きながらも仕方がないと言いたげな表情で、私の頭をガシガシと乱暴に撫でる犬耳の騎士。

 そんな私と犬耳の騎士を笑う猫耳の騎士。


 …………温かいな。


 二人の行動にそう思っていると、ポタリと何かが頬にかかった感触を感じた。



「…………え?」

「なんだ?」



 驚きの声をあげると、撫でる手を止めた犬耳の騎士がのぞき込んでくる。

 慌てて頬をぬぐい見てみれば、手のひらはわずかに赤くなっていた。


 …………赤い水?



「赤い水?」

「…………いや違う」



 私の言葉に、眉間にしわを寄せながら私の手を取る犬耳の騎士。


 気付けば私の近くにいた騎士たちも空を見上げたり、地面に落ちている赤い水を観察し始めている。

 その表情はみんな、ありえないと言いたげな表情を浮かべていた。



「これ…………血だ!!」



 犬耳の騎士の言葉が合図だったのだろうか。


 ポツポツと、まるで雨の降り始めのように降ってくる赤い水__犬耳の騎士いわく『血』らしい。

 そんな現象に、鍛練をしていた騎士たちもザワザワと驚きながらも周囲を観察している。


 …………もし本物の血なら、下手に体内に入ったら危険だ。


 そう思った瞬間、広場につけていた非常事態用の結界を発動させた。



「助かった、サーヤ」

「いえ」



 まるで本部を囲うような結界を発動したことで、血の雨が降ってくることはなくなった。

 その代わり、結界の上に落ちてはいるけど。


 そんな状況に、私にお礼を言うシヴァさん。



「にしても、血の雨とかなんなんだよ」

「異常気象か?」

「血の雨が降るとか、どんな天気だよ」



 こんな状況下だからだろうか。

 先ほどまでのギスギスとした雰囲気は霧散し、現状についてみんな話し合っている。


 …………まあ、こんな状況下であの状況を継続しろという方が無理あるだろう。


 そう思っていると、上から何かが落ちてくる音が聞こえた。



「見るな!!」



 上を見て確認しようとした瞬間、犬耳の騎士が私の覆いかぶさってきた。


 なんだと思って、暴れようとした瞬間だった。





 上でグチャッという、何かがつぶれたような音が聞こえたのは____






次回予告:中止になる合同鍛練

     行われる緊急会議

     

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