(175)ドラゴンの集団
~紗彩目線~
バサッバサッ。
周囲に響くそんな大きな音と共に、暗くなる周囲。
目の前に広がる光景に、私は痛くなった胃を思わず抑えてしまった。
…………そろそろ、本気で胃薬を買いに行こうかな。
商人街から帰ってきた私達は、シヴァさんたちと一緒に広場に集まっていた。
シヴァさんの話だと、どうやらここで竜人騎士団の人たちを待つらしい。
…………うーん、事前情報だけで考えると会いたくない。
そう思っていると、上からバサバサという大きな羽音が聞こえてくる。
それも、大きさからして複数。
なんだと思いながら上を見上げれば、そこには真っ黒な集団が空を飛んでいた。
…………真っ黒な集団というよりは、何十ものドラゴンの群れなんだけど。
「…………もしかして、あれが」
「ああ、竜人騎士団だ」
私の言葉に、帰ってくるシヴァさんの言葉。
その言葉に、私は思わず呆然としてしまった。
…………来るのって、空からかい!!
頭の中でそうツッコんでしまった私はきっと悪くない。
「…………空から来るなんて聞いていません」
「逆に何で来ると思ったんだ?」
「レオン様みたいに普通に表の門からかと」
「ああ……まあサーヤからすればそうかもな」
シヴァさんとそう会話している最中も、ドラゴンがどんどん広場に着陸していく。
しかも、着陸したドラゴンから順番にゴキベキという音が響いて、ドンドン形が見慣れた人の形になっていく。
…………あの骨が折れるような音がなるのって、姿を複数持っている種族では普通のことだったのか。
聞いていて、非常に怖いけど。
そう思っていると、集団の手前にいた青色の鱗のドラゴンが人型を取った。
うなじまでの紺色の髪に紺色のきつめの釣りあがった紺色の瞳に、頬には青色の鱗。
…………なんだろう。
物凄く人相が悪い。
あれだ。
ヤのつく自由業にいそうな顔だ。
失礼だとは知りながらも、心の中でそう思ってしまった。
「久しぶりだな、ロルフ副団長」
「ああ。貴殿こそ息災だったか、シヴァ団長」
私の目の前でそう交わされる、シヴァさんと青色の竜人の会話。
シヴァさんは真剣な表情で、青色の竜人は無表情で。
でもその声音からは、お互い信頼しているような温かさがある。
青色の竜人__『ロルフ』さんは、シヴァさんの言葉からして竜人騎士団の副団長なのだろう。
そう思っていると、『ロルフ』さんがシヴァさんから視線を外し私のことを見た。
…………いや、睨んだ?
アニメだったらギロリという効果音がなりそうなほどだったし。
「…………一つ聞いていいか?」
「…………なんだ」
「何故、このような場に赤子を連れてきているんだ?」
『ロルフ』さんの言葉に、その場の空気がピシリと固まった気がした。
…………マジで、赤ん坊扱いされるんですか。
次回予告:竜人騎士団副団長の言葉に、凍る空気
交わる会話で、空気は温まるどころか一触即発の空気に
誰か、紗彩に胃薬を




