(170)正義とは②
~シヴァ目線~
今回の件で、俺は自分の正義が正しいのかわからなくなった。
切り裂きジャックは、たしかに無差別殺人を犯した凶悪犯だ。
死刑なのも納得できる。
あの男は、それだけ恨みを買ったからな。
…………だが、もしかしたら何かできたのかもしれないと思ってしまう。
種族も違う。
国も違う。
法も違う。
それでも、何かできたのかもしれない。
「…………正直、正義って人それぞれだと思います」
正義とは何か。
そう聞いた時、サーヤからそんな答えが返っていた。
切り裂きジャックの背景は、かなり濁してサーヤに伝えた。
正直、かなり教育に悪い内容だった。
だが、サーヤには知る権利がある。
…………まあ、なんとなく濁した部分も理解している気がしたが。
とりあえず、こいつの前の環境にいた奴全員シメる。
これは、決定事項だ。
「正直、それこそ勝者が正しくなるんじゃないでしょうか?」
物語を読む年齢であろうこいつに聞いた時は、正直『悪』という答えが出てくると思った。
こいつはかなり特殊な目線で物事を見るが、どこか子供らしいところも最近出てきた。
だが、その答えは予想外だった。
『正義の反対は誰かの正義』
正直、勧善懲悪を当たり前としている竜人騎士団が聞いたら怒りを抱くだろうな。
だがその言葉を聞いた時、サーヤの目は失望の色を持ちどこか遠くを見ていた気がした。
…………サーヤは、勝者がすべて正しいという行為を身を持って体験したのだろうか?
サーヤが正しかったのに、敗者だという理由だけで周囲から悪人のような理不尽な扱いを受けたのか?
「俺の正義…………か」
そう呟きながらも思い出すのは、親父の言葉だった。
――――『シヴァ、お前は何を支えとする』――――
――――『支え?』――――
――――『ああ。我等騎士は、救い守る事こそが役目だ。その役目を褒められることなど、ない。時には間に合わず、恨まれることだってある』――――
――――『騎士には、支えがなければいけない』――――
俺が、騎士を目指した理由。
親父が騎士だったからというわけでもない。
ただ、守りたかった。
――――『シー君』――――
優しく笑う母。
どんなにクソな状況でも、俺を守る盾となった母。
絶望したように首を吊り、真っ黒な目で揺れる母。
守りたかった俺の光。
――――『俺は…………』――――
――――『俺は、理不尽に傷つくことがなくなればいいと思う』――――
――――『理不尽に傷つけられた母さんのような人を、俺は助けたい』――――
それが、親父の質問への答えだった気がする。
そこからも、なし崩しに思い出す黒歴史の数々。
正直に言えば、思い出したくないどころかこの時代の俺をおもいきり殴り飛ばしたいぐらいだった。
あの頃は、まだ親父に引き取られたばかりの頃だった。
何度も憎んだ。
何度も恨んだ。
俺のことを引き取ってくれた親父をなじった。
なんで母を助けてくれなかった。
なんで母をいじめた奴らを罰してくれない。
そう、なじった。
でも、気づいた。
夜中、親父は泣いていた。
親父は悔いていた。
意味が解らなかった。
親父は母を見殺しにした大人だ。
そう思っていた。
気になったから勉強した。
それで気づいた。
親父の立場じゃ、母を助けることができないんだと。
親父に救われたこと自体が、かなり奇跡に近いんだと。
俺は学んだ。
母は助けれなかった。
なら、母のように理不尽にいじめられる奴らを助ければいいんだって。
「はは…………我ながら単純な理由だな」
正直に言えば、これが正義になるのかわからない。
でも、なれたらうれしいな。
次回予告:とある男の一生と後悔
【今現在の勘違い】→【実際は……】
・帰らずの森に捨てられていた訳あり幼女
→幼女ではなく、背が低い成人女性
・魔法の存在を知らされていなかった
→まず存在していなかった
・母親以外は味方ではなかった
→まともな親でまともな子供であれば心配もする
・まともな食事を与えられていなかった
→完全に紗彩が悪い
・仕事(子供はしなくてもよい)があった?
→成人しているので、就職している
・負の遺産である土下座(命をささげて謝罪する)を平気でする
→価値観や文化の違い
・子供らしくはないが、子供らしい残酷さを合わせ持っている
→成人しているし、残酷さではなく単純な疑問
(わかっていて嫌なら、なんで子供産むの?子供産むのなら、その子の人生とかもしっかりと考えてから産むべき)
・周りの大人は敵で、子供は味方だった?
→これこそ、認識の違い
・竜人かリザードマンの友がいたが、亡くなった?
→リザードマンのハーフにペットは言いにくい
・肉体労働=身売りをしていた?
→肉体労働=バイト
・役立たずはいなくなれと言われていた?
→先輩が役立たずな後輩や同僚や上司に向けた言葉
・人体実験の被験者?
→そんな事実はない。復讐相手も、シヴァを虐げた奴ら以外は存在しない
・正しいことをしたのに、敗者だという理由で悪人だと言われ理不尽な扱いを受けた?(NEW!!)
→歴史を思い出しただけ




