(167)同類②
~アルカード(アル)目線~
「容赦がないんだな、お前」
未だに叫び声が聞こえてくる牢を背後に、団長からそう言われて思わず首をかしげてしまいました。
「そうですか? …………正直、怒りは収まりませんが」
「まあな。俺達は、サーヤとジャックは助かった。だがそうでなかった被害者の遺族にとっては、あの男
の存在は殺しても許せない存在だろう」
私の言葉に、どこか哀し気に言う団長。
まあ、子供の年齢を聞けば他人事とは思えなくなったのでしょう。
団長は、とてもお優しい方ですから。
「だが、あの牢の中にいる男をあそこまで叫ばせたのはお前ぐらいだろうな」
ただそう言いながら苦笑する団長の反応に、思わずクスリと笑ってしまいました。
あの牢には自害防止と発狂防止に、特殊な魔法がいくつもかけられています。
まあ、今回はそこを利用させてもらいましたけど。
狂ってしまうほど、まじめで優しい男。
ですが、それが何だというのです?
加害者に転じた以上、私達にとっては狩るべき敵です。
あの牢でも普通に話せるほどの精神力を持っているようだったので、ちょっと現実を突きつけても完全に狂うことはないと判断したので被害者遺族の嘆きを聞いてもらいました。
まあ発狂できないので、再び狂うことで現実から逃げることもできませんけど。
…………ふふ、でも私よりも容赦がない方はいますよ、団長。
「少なくとも大多数の者たちの前で女の罪を、女の手で無意識に公開処刑させたサーヤよりはマシでしょう?」
あの話を聞いた時は、あまりの傑作な話に大きな声で笑ってしまいましたね。
しかもちゃっかり物的証拠としてボイスレコーダーを提出したり、その場にいた大人たちに頼んでもしもの時は証言してもらうように約束したり。
あの子の手際の良さには感服しましたよ。
「…………だんだん、お前に似てきた気がするんだが」
「まさか。あれは、彼女の天性の才能だと思いますよ。彼女、無意識に敵に痛手を加える方法を取りますからね」
「種族柄なのか、あいつだけなのか…………味方で良かったと思うよ。まあ、お前もだけど」
「おやおや…………それは嬉しいですね」
面白くなさそうに眉を顰める団長に、私は愉快になってまた笑ってしまいました。
でも、そうですね。
彼女が味方で良かったですよ。
団長もセレスもジャックも、あの子が来てからかなりいい面で変化しましたからね。
そう思いながら、立ち去る団長に続く。
「大切な国民を…………あの子たちを傷つけた時点で、私たち騎士団を敵に回したのですよ? …………私達の怒りを、骨の髄まで解らせて差し上げなければ」
叫び声が聞こえてくる牢の方を振り向いて、私はそう小さな声で呟きました。
次回予告:シヴァたちから、切り裂きジャックたちの処遇を知る紗彩たち




