(158)騎士
~ジャック目線~
あれから、一週間が経った。
いつも通り鍛練していれば、先輩から団長の呼び出しを聞いて第一執務室に向かった。
「あれ、サーヤ?」
「ジャック君?」
団長に呼び出され、第一執務室の前に行けばサーヤと出会った。
サーヤに『ジャック君』と呼ばれて、顔がにやけそうになる。
俺が全快した後、サーヤに『君付け』を頼んだんだよね。
『さん付け』だと、なんか距離を感じるし。
そう思っていると、サーヤが周囲を見回していることに気が付く。
キョロキョロと見まわしてたけど、どうしたんだろ?
「どうしたの?」
「健康診断週間の手伝いでジョゼフさんに用があったんですけど、医務室にいなかったので第一執務室にいるかと思いまして」
ああ…………そう言えば、ジョゼフ先生がサーヤにも手伝ってもらうって言ってたっけ?
…………あの、カオスをサーヤに見せるわけ?
とりあえず、俺は大人しく受けようっと。
サーヤに変な目で見られたくないし。
「俺も第一執務室なんだ。団長に呼ばれてて」
「シヴァさんに?」
「呼びだしだって…………俺、何かやったかな?」
俺の用件を言えば、サーヤは無表情で首を傾げた。
…………マジで、俺何をやらかしたんだろう?
報告書の出し忘れとか?
いや、切り裂きジャックの件の報告書はもう出したし。
じゃあ、他にも書類の出し忘れとか?
そう思っていると、サーヤがコンコンとノックをしている。
え、サーヤ。
俺、まだ心の準備ができていないんだけど。
「入れ」
「失礼します」
団長の声とともに、サーヤが言ってドアを開ける。
…………サーヤ用のドアノブついてよかったね、サーヤ。
そう思いながら、俺も「失礼します」と言って中に入る。
中に入れば、団長と副団長がこっちを見ていた。
「ジャックにサーヤか」
「忙しいところすみません。ジョゼフさんはいますか?」
「いや、見ていない。今の時間なら、町に出ているだろう。医務室の中で待っていれば帰ってくると思うぞ」
「なるほど…………ありがとうございます」
団長とサーヤが話している横で、緊張しながらも二人の会話が終わるのを待つ。
緊張で、ドキドキする。
俺、怒られるのかな?
…………いや、まじで何の書類忘れたんだろ?
最近は、切り裂きジャック以外で報告書がいる事件なんて関わったっけ?
というか、なんでサーヤはそんなに緊張しないで団長と話せるわけ?
…………まあ、サーヤは結構真面目だもんね。
無表情だけど。
そう思っていれば、気づいたらサーヤが退出していた。
…………サーヤ、俺を置いていかないで。
「さて…………ジャック。呼び出しの件だが」
「はい」
俺のことをジッと真剣な表情で見る団長。
…………なに、言われるんだろう。
しかも、副団長までいるし。
副団長って、怒るとすごく怖いんだよね。
できれば、副団長がいない時が良かった。
「お前を、今日より見習いから正式に騎士へと昇格する」
「…………へ」
団長の言葉に、俺は思わずぽかんとしてしまった。
あの、副団長笑わないでください。
え?
昇格?
報告書の出し忘れじゃなくて?
「以上だ。戻っていいぞ」
「へ? 昇格? え?」
「…………切り裂きジャックの件は、各国にかなり影響のある件だ。何しろ、二・三年でかなりの犠牲者を出した犯罪者だったからな。お前は、それを倒した。…………何より、お前の精神力から騎士になることを俺が認めた」
…………マジか。
団長の言葉を聞いても、俺は実感がわかなかった。
騎士への昇格?
それって、俺も先輩たちみたいに騎士になったって事?
「~!? ありがとうございます!!」
俺は嬉しくて、思わず大きな声でそう言ってしまった。
騎士になれた!!
やっと、みんなと同じ土俵に立てた。
「ふふふ、これからも精進してくださいねジャック」
「はい!!」
「まあ、まずは今度ある竜人騎士団との合同鍛練を頑張ってくださいね」
「…………え~」
副団長に言われてうれしくなったけど、一気にしぼんでしまった。
そんな俺に、副団長は笑ってるし団長は呆れたような表情を浮かべている。
合同鍛練…………しかも相手は竜人騎士団。
…………あいつが来るってことかよ。
最悪だ。
次回予告:ジャックが出て行った後、シヴァとアルは竜人騎士団について話す
シヴァは、一波乱があることを予測した




