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(155)家族①

~ジャック目線~



 目が覚めて最初に見たのは、真っ白な天井だった。


 真っ白なシーツ。

 真っ白な服。

 両手には包帯。

 腹部には重み。



「…………重い?」



 首をかしげながらもなんとか首だけをあげてみれば、サーヤが眠ったまま俺の腹の上に突っ伏していた。


 …………うん、どういう状況なんだ?

 というか、なんで俺ここにいるんだ?



「おはよう、ジャック君」

「おはようございます…………?」



 そう思っていると、ジョゼフ先生が俺のベッドの近くにやって来た。


 いや、まじでどういう状況なんだ?

 ジョゼフ先生がここにいるってことは、ここは医務室なんだろう。

 だけど、なんで俺はここにいるんだ?


 確か、俺は切り裂きジャックと対峙して個有スキルを使って反撃したはず…………あ。



「あ、そう言えば切り裂きジャックは…………痛っ!?」

「落ち着いて、ジャック君。君、あれから二週間も眠っていたんだから」



 慌てて起き上がれば、両手両足にズキリと痛みが走る。

 意味が分からないと思いながらも、サーヤを起こさないようにどかしながらシーツをめくれば包帯がまかれた両足からは血がにじんでいた。


 え、まじで?

 てっきり、負傷したから怪我が治ったと思ったんだけど。


 そう思っていれば、ジョゼフ先生の言葉に驚いた。


 え、二週間?

 俺、二週間も寝てたの?



「切り裂きジャックについてだけど捕まえたよ。と言っても、君のスキルでほとんど戦えなかったらしいから本当に捕縛だけだね」

「ジャック!! やっと起きたのか、てめぇ!!」



 ジョゼフ先生の報告を聞き終わったとたん、ガラッと乱暴にドアを開ける音が響いた。

 入口の方を見れば、焦った表情を浮かべた先輩騎士たちが立っていた。


 あの、先輩。

 サーヤが起きるので、できれば大声はやめてほしいんですけど。


 そう思っていると、俺と同じ犬の獣人の先輩が俺のベッドの隣に来た。



「馬鹿野郎!! 聞いたんだぞ、お前。役に立たないとか、んなこと言ってたんだってな」

「あ、ごめんなさ」

「馬鹿野郎、お前が謝んじゃねぇ!!」



 先輩の勢いに押され謝ろうとすれば、眉間にしわを寄せた先輩にまた怒られてしまった。


 あの、先輩。

 顔、怖い。



「お前が役立たずって、誰が言ったんだよ!! 言え!! ぶっ殺してやる!!」

「いや、あの」

「言え、ジャック。 そいつボコボコにして、髪ひっつかんで、おもいきり蹴り上げて、お前の所まで引きずり回して土下座させる」



 ブチキレモードの先輩の対応に困っていれば、同じく馬の獣人の先輩もやって来て静かに言う。


 いや、あんたが引きずり回したら死ぬじゃんか。

 あんた、自分の脚力どれぐらいか知ってます?

 二年前の合同訓練で、竜人騎士団の騎士をおもいきり蹴り上げて一気に重症に追い込んだじゃないですか。


 俺、蹴られたら一瞬であの世行きになるんですけど。



「俺の可愛い後輩が役立たずだぁ!? 後輩の喧嘩は、俺の喧嘩だ!! ぶっ殺してやる!!」

「いい加減にしないか!!」



 再び叫ぶ犬の先輩に、とうとう堪忍袋の緒が切れたのかジョゼフ先生が大きな声で叫んだ。

 ジョゼフ先生の方を見れば、いつもの優しい笑みを浮かべておらず、まじで魔王かと思うほどに怖い表情を浮かべていた。 


 あれだ。

 例えるなら、神人族が作ったっていう『般若のお面』だ。

 夜に見たら、絶対に悪夢になる奴。



「いいかい、君たち。ジャック君は、重症を負ってやっとさっき起きたところなんだよ? そんなジャック君に集団で詰め寄るなんて、いったい何を考えているんだい!!」



 目が笑っていない笑顔(ブチキレ副団長スマイル)を浮かべるジョゼフ先生。


 …………もう、心の中でふざけていないと俺まで怒られている気分になりそう。


 腰に手を当て先輩たちを説教するジョゼフ先生を見ていれば、いつの間にか起きたのかサーヤがマグカップに水を入れて差し出してくれた。


 …………まあ、こんなに騒いでいたら眠れないよね。

 俺もそう思う。



「まったく…………だいたい犯罪を取り締まる私達が『ぶっ殺す』なんて言うものじゃないよ」

「だ、だけどよ先生……」

「何か言ったかい?」

「ナンデモナイデス」



 ジョゼフ先生が怒っている最中に、犬の先輩が何かを言いかけるが、ものすごく怖い笑顔のジョゼフ先生に片言で返事をしていた。


 …………まあ、そうなるよね。

 俺もジョゼフ先生の説教の時はそうなるから、基本ジョゼフ先生の説教の時は自分が悪くなければそのまま聞いてる。


 そう思っていると、ジョゼフ先生がこっちを向いた。


 思わずビクッとなったのは、きっと俺だけじゃないはず。





「…………どうやら、少し話し合いが必要のようだね。すまないが、サーヤ君。ジャック君を見てくれないかい。私は、ちょっと彼らを説教……いや、彼らとお話合いをしてくるから」

「あ、はい」



 ジョゼフ先生のニッコリ笑顔には何も思わなかったのか、サーヤがいつも通りの無表情でうなずいた。


 …………サーヤ、強すぎない。

 







次回予告:説教を終えたジョゼフ

     そんなジョゼフにとある言葉をかけられるジャック



 次回、ジャック号泣する!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 二週間も、眠ったままだったんですね、ジャックは、ですが、死ななくて、目覚めて本当に、良かったです。騒がしかったですが、良い先輩を持ちましたね、お話と言うなの説教をジョセフ先生から受ける…
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