(151)ジャックVS切り裂きジャック③
~ジャック目線~
――――『私は、ジャックさんに救われました』――――
――――『ジャックさんがあの時ボールで切り裂きジャックの意識を私から外してくれたことで、私は道具を取り出すことができました。ジャックさんがいたことで、意識のない女性を運ぶことができました。私には逃げるための脚力があっても、腕力も背もありません。全部、道具頼みです。道具がなければ、私は逃げることしかできません』――――
――――『何より、私はジャックさんがいることで安心できました』――――
――――『だからいくらジャックさんでも、ジャックさんのことを役立たずなんて言わせません』―――
鏡を見て、どんどん思い出すサーヤの言葉。
捨てられると恐れる俺に、淡々とどこかしっかりとした声で教えてくれた。
「俺は…………確かに誰からも必要とされないかもしれない」
母親に捨てられた俺。
必要とされたい一心で犯罪に加担した俺。
父親から汚点だと言われた俺。
これは、俺。
「でも、サーヤは…………俺に救われたと言ってくれた」
傷だらけの女の人を背負った俺。
ボールを投げた俺。
団長に褒められた俺。
副団長に怒られた俺。
__団長に経験は役に立つと言われた俺。
これも、俺。
__ああ、そうだ。
俺が騎士団に入った本当の理由は__
「…………俺は、あの人のような誰かを助ける光になりたかったんだ」
口答えをした俺に拳を振り上げた元飼い主の貴族。
そんな貴族の拳を止めた副団長。
俺を庇ってくれた団長。
俺の治療をしてくれたジョゼフ先生。
俺の良い部分を教えてくれた団長。
いろいろなことを教えてくれたり、時には怒ってくれた騎士団の皆。
俺にとって、光だった。
ヒーローだった。
こんな小汚い役にも立たない俺にいろいろと教えてくれて、騎士団の仲間として迎えてくれた皆。
…………俺は、光になりたかったんだ。
俺を助けてくれた団長のように。
空っぽだった俺を、俺にしてくれた皆のように。
誰かを救う光になりたかった。
そう思っていると、ふと別れる前のサーヤの言葉を思い出す。
――――「約束です」――――
そう言ったサーヤとやったお呪い。
…………絶対に生きて帰らなきゃ。
そのためには、今の状況をなんとか覆さなきゃ。
このままじゃ、団長たちが来ても人質にされて足を引っ張るだけだし。
…………ああ、そうだ。
そう思った瞬間、とある策を思いついた。
「なあ、父さん」
「私をそのような言葉で呼ばないでくれます?」
俺の問いかけに、憎悪がにじんだ声で答える切り裂きジャック。
そうだね、呼んでほしくないね。
あんたにとって俺は、血のつながりのある息子であると同時に憎い女の息子なんだから。
だから、俺もあんたを『父さん』って呼ぶのは今回が最後にするよ。
どうせ、あんたと会うことは今回で最後になるんだから。
今の動くことすらキツイ俺でも、あんたを倒す方法。
…………いや、こういう状況だからこそ使える方法。
「別にいいよ。俺が、あんたをこの言葉で言うのは今回が最後だから」
「おや、自分の終わりを……死を受け入れるのですか? あの女とは違い、ずいぶん諦めが早いのですね」
自分の終わりを受け入れる?
自分の死を受け入れる?
…………バーカ。
終わるのはあんただ、切り裂きジャック。
正直、今だからこそこの方法を思いついた。
前までの俺だったら、思いつかなかっただろうな。
サーヤに感謝だ。
サーヤの言葉が__行動があったからこそ、俺は改めて自分と向き合うことができる!!
「ははは…………団長が言っていたんだ。…………俺の良いところは、諦めないところだってな!!」
諦めない__諦めが悪いって奴だな。
良い点でもあり、悪い点でもある。
こんな状況下だけど、俺は絶対にあきらめない。
じゃなきゃ、サーヤとの約束を破ることになるからな!!
「【貴方に不幸を】!!」
サーヤの個有スキルが俺を守る盾なら、
俺の個有スキルはあんたを貫く武器だ!!
次回予告:自身の個有スキルを使うジャック
切り裂きジャックに起こった変化とは?




