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(147)鏡と声

~紗彩目線~



 ガサガサ。


 服の裾が引っ掛からないように抑えながら、私は茂みの中を走る。


 正直、障害物が多いって聞いていたけどこれはもう道と言える気がしない。

 完全な獣道だ。


 ワサワサと風に揺れる茂み。

 緑の匂いが香る木々。

 ブ~ンッと、時折聞こえてくる虫の羽音。


 …………これ、虫が嫌いな人とかは通れない気がする。



 あれから、どれだけ経ったかわからない。

 長くも感じるし、短くも感じる。


 とにかく、本部に行って伝えなければ。


 そう思いながら走るけど、緊張と不安と疲れからか足が重く感じる。

 そして、そんな私を余計に不安にさせる音が響いた。


 ピシッ。


 そんな小さな音が、私の手の中にある鏡から聞こえてきた。

 見れば、鏡の全体に小さなひびが入っている。


 …………ジャックさんが持っている鏡が何かの拍子で割れたんだ。

 私は、鏡の状態からそう理解した。


 この二枚の鏡はお互いがスキルでつながっていることで、片方に何かがあるとその影響がもう片方にもくる。

 ひびが入ったということは、割れたのだろう。


 そう思いながらも、本部に向かって走る。


 ジャックさんが心配だけど、今の私の仕事は本部に言って今の状況をシヴァさんたちに伝えること。

 今一番優先されるのは、これ。


 …………正直に言えば、この作戦は失敗なんじゃないかと思う。

 だって、成功だったらこのねちっこく感じる視線はないはずだから。


 そう思いながら、視線の主を振り切るためにも両足に力を入れ地面を蹴り上げ走る。

 …………逃げ切れる自信はないけど、このまま追ってくるんならいっそのこと騎士団本部まで連れて行ってやろうかとも思う。

 実力がわからないから、あまりいい策とは言えないけど。



「ヤッホ~」

「!?」



 そう思っていると、どこか聞き覚えのある声が頭上から聞こえてきた。


 上を見上げれば、前に見たことのある二色の髪。

 心底愉快だと言いたげな笑顔。


 私の近くにある大木の枝に座っていたのは__ロイドさんだった。



「…………なぜ、あなたがここに?」

「え~、俺がここにいちゃダメなの~?」



 私の問いに、ふざけたように笑い木の枝から飛び降りたロイドさん。


 正直無視して行きたいけれど、進行方向にロイドさんがいる。

 周囲は茂みと木で覆われていて、道からそれて避けることもできない。


 何より、あの誘拐犯が侵入した事件の後。

 ロイドさんが、偽セレスさんの仲間である可能性が出ている。


 そうなると、騎士団とは敵対関係にある可能性が高い。

 下手に無視して行って、後ろから攻撃されたらたまったもんじゃない。



「…………どいてください」

「え~、やだ~」



 冷静に隙を見せないようにそう言えば、ニコニコと笑いながらロイドさんは言う。


 まあ、正直に言ってどいてくれるとは思ってないけど。


 でも、ここで無駄な時間を過ごすわけにはいかない。

 ジャックさんが今も必死に時間を稼いでくれているんだから、その時間を無駄にするわけにはいかない。


 鏡が割れたということは、道具の効力も消えた。


 ジャックさんが私ではないことがバレているだろう。そうなると、彼の命が危ない。



「チビちゃん、あのワンちゃんを助けるためにここ通らなきゃダメなんでしょ~。切り裂きちゃんに追われてるもんね~」

「…………」

「え~、無視~?」



 にこやかに笑うロイドさんの言葉に、私は反応できなかった。


 なんで、この人は私達が切り裂きジャックに追われていることを知っているんだ?

 なんで、私達の囮作戦のことを知っているんだ?


 まさか、見ていたのか?

 それとも__。


 私の中で、嫌な仮説が出てきた。


 __この人は、切り裂きジャックの仲間なのか?

 切り裂きジャックの仲間で、私達の行動を予測して私を追ってきたのか?




「まあ、いいや~。俺はね~、あのワンちゃんは死んでも仕方ないって思うからどうでもいいからお話しようよ~~」

「は?」



 嫌な予感を感じていると、ロイドさんの言葉に私は開いた口がふさがらなかった。


 ジャックさんが死んでも仕方がない?



 この男は、そう言ったのか?










次回予告:ロイドと会話する紗彩

     その会話から、紗彩はある事を知る

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― 新着の感想 ―
[一言] サーヤの、前に現れた、ロイドとは、切り裂きジャックの、言う、彼なのでしょうか、ロイドの態度にイラッと、来ます。続きが、気になります。頑張って下さい。
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