(146)怒り②
~ジャック目線~
「…………ねぇ、リトルレディ。あなた、『彼』と長の男の関係性は知っているのですか?」
切り裂きジャックの言葉に怒りで震えていると、そんな奴の声が聞こえてくる。
『彼』って、たしか切り裂きジャックにサーヤの存在を漏らした奴のことだ。
そんな奴が、団長とかかわりがあるって言うのか?
意味が分からない。
『彼』とかいうやつの目的も。
何が目的で、切り裂きジャックが『彼』の存在をサーヤに伝えるのかも。
…………俺ももっと頭がよかったら。
団長や副団長たちなら、狙いも何となくわかるのかな?
「ふふふ」
そう思いながら気配を押し殺して茂みの中でうずくまっていれば、すぐ近くで押し殺したような笑い声が聞こえてくる。
気付いているのか、気づいていないのか。
いや、高確率で気づいているだろう。
気付いていて、俺を__サーヤを怖がらせようとしているんだ。
「ああ、愉快ですねぇ。だって、このことを言ったら怒り狂った『彼』に殺されてしまいそうですから」
心底愉快だと言いたげな声音で言う切り裂きジャック。
『彼』が誰かはわかんないけど、何となくでもヤバい奴ってことだけはわかる。
そう思っていると、ザワリと不安が広がる。
何かは、よくわからない。
ただ、漠然とした不安。
「さあ、リトルレディ…………赤く染まりましょう!!」
「ぐっ…………しまった!!」
嫌な予感を感じて素早く茂みから出れば、さっきまできれいに咲き誇っていた複数の花が地面に落ちていた。
それと同時に、パリンッという音が辺りに響く。
見れば、俺の懐から落ちた鏡が割れていた。
ヤバい!!
そう思ったけれど遅かった。
「鏡…………? それにその姿…………」
驚いた声を出しながらもこちらを見る切り裂きジャック。
その瞬間、俺は無意識にカバンから数枚の紙を取り出していた。
バンッ!!
そんな大きな音とともに、目の前で真っ赤な炎が揺れる。
…………サーヤ、これ殺傷能力的にはどれぐらいなの?
まだまだ改良の余地があるって言ってたけど、サーヤなんでそんなに犯罪者に対して殺意が高いの?
そう思いながらも、物理的に燃えている切り裂きジャックに背を向けて全速力で走り出す。
俺は、なにも見なかった。
「…………ああ、やっと見つけました!!」
背後で、殺意を感じるような冷たい声が聞こえてくる。
「やっと…………やっと見つけました!! お前だけは、絶対に逃がしません!!」
…………ごめんって。
俺、殺意はないけど自分の命をなんとなくで守っただけなんだけど。
これ、サーヤで言う正当防衛って奴だよね?
俺、悪くなくね?
次回予告:本部に向かう紗彩
途中でとある人物に遭遇する
(注意!!)ジャックに!!
シリアスは!!
無理だった!!




