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(134)医務室

~紗彩目線~



 気づくと、目の前にはぼやけた真っ白な景色が広がっていた。

 しばらくボウッとして言うと、次第に視界がクリアになっていく。


 どうやら、私が見ていたのは真っ白な天井だったようだ。


 …………というか、ここ何処?



「…………ここは?」

「気が付いたかい、サーヤ君」



 なぜかカラカラな声でそう呟くと、ジョゼフさんが私の顔を覗き込んできた。


 え、なんでジョゼフさんがここにいるの?



「ジョゼフさん!? っ!?」



 思わず勢いで起き上がると、その瞬間両足に鋭い痛みが走った。


 …………怪我したのか?


 ズキズキと痛む足に首をかしげる。

 掛け布団をめくってみても、怪我らしいものはない。


 …………この痛み、もしかして筋肉痛?


 そう考えると、なんとなく納得がいく。


 運動会とかの後には、この痛みで一週間ほど苦しんだ記憶があるし。



「ああ、いけないよサーヤ君」

「あの、ここは?」

「医務室だよ」



 困った表情を浮かべたジョセフさんにそう言われながら、近くにあった上着を肩にかけられた。


 わあ、紳士。


 そう思いながら聞けば、そんな答えが返ってくる。


 …………ここ、医務室だったんだ。

 というか、なんで忘れていたんだろう?

 私、ここに来た当初はここで一回眠ったのに。



「君は、あまりケガをしないからね。覚えていなくても仕方がない」



 ジョゼフさんの言葉に納得しているうちに、何があったのかを思い出した。


 確か、私はさっきまで切り裂きジャックに遭遇したんだ。

 それでジャックさんに言われて時間稼ぎをして、捕まりそうになった時はジャックさんに助けられたんだ。


 …………というか!!



「あ、あの人は!? あの女性は無事なんですか?」

「女性は無事だよ。かなりギリギリではあったけれど、止血していたのが良かった」

「…………そうですか。そう言えば、ジャックさんは?」

「まだ、眠っているよ。さて、まあまずはこれでも飲みなさい。君たち二人とも、三日間も眠っていたんだよ。今の君たちの体は、休息を欲しているんだ。しっかりと休めなければ」

「三日間!?」



 苦笑しながらジョゼフさんが私のマグカップを渡してくるけど、彼の驚きの言葉に私は思わず受け取ることを忘れてそう聞き返してしまった。


 三日間?

 さっき起こったと思っていたことが、実際は三日前の話だったって事?


 え、というか私三日間も寝てたの?

 だから、こんなに喉からからなの?



「仕方がないよ。緊張や焦りや恐怖は、体にいらない力が加わるし精神的にも疲れる。それだけ、君達の体が休息を求めていたんだよ」



 ジョゼフさんの言葉は、どこか納得がいってしまった。


 さっき__三日前のあの時はとにかく逃げる事ばかりを考えて走っていた。

 いつもなら長距離移動できるように考えながら走っていたのが、あの時はもうとにかく無我夢中だった。


 だから、もしかしたらかなり無理をしたのかもしれない。


 …………というか、三日前だって言うのなら切り裂きジャックは!?



「待ってください! あの女性の店に、切り裂きジャックが」

「わかっているよ。すでに、セレス君たちが向かった。でも、誰もいなかったらしい」

「そんなっ!? でも、切り裂きジャックはっ」

「落ち着いて」



 思わず焦りから大きな声を出せば、ジョゼフさんは私を落ち着かせるような静かな声で言う。

 でも、その言葉を聞いても、私は焦りしか感じなかった。


 居ないはずがない!

 だって、あそこにはいたはずなんだ!

 私もジャックさんも、しっかりとこの目で見たんだ!


 そう思いながら慌てたように言うと、ジョゼフさんがカップを近くの机に置いて私の両肩に手を置いた。



「君たちの状態から、ある程度の状況が理解できてね。手口が同じだったし女性の状態からして、本物の切り裂きジャックだろうとあたりをつけたんだ」

「…………そうだったんですか」

「まあ、君達が起きてよかったよ。女性の方は意識を取り戻したんだけど、背後から奇襲されたようでね。何が起きたのか、理解していなかったみたいだ」

「そんな……」



 ジョゼフさんの言葉に、私は安心してしまった。

 どうやら、無意識下に自分たちの発言を否定されたと思ってしまったらしい。


 でもその後の言葉に、女性の精神面が心配になってしまった。

 急に後ろから襲われて、気づいたら騎士団の医務室にいて大怪我を負っていたなんてホラー映画よりも恐ろしいだろう。


 少なくとも、私なら恐ろしくて年齢関係なく号泣する。



「そういうわけで、君達からも事情を聞きたいんだ。君たち目線なら、ある程度の状況がわかるかもしれないからね」

「わかりました」



 申し訳なさそうに言うジョゼフさんに、私は頷いた。


 たぶん、事情聴取のような物だろう。

 まあ女性が状況をは把握していないのなら、他の目撃者の証言も必要だろうしね。








「あ、あと筋肉痛は覚悟しておくように。疲労はあまり魔法で回復させるのはよくないから、私としては使いたくないんだ」

「…………はい」



 …………この痛みは、やっぱり筋肉痛によるものだったんですね。


次回予告:事情聴取を受ける紗彩とジャック

     だが、シヴァのとある言葉でジャックの様子がおかしくなる

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  最後のジョゼフのセリフ前。  まあ女性が状況をは青くしていないのなら→まあ女性が状況を把握していないのなら [一言]  紗彩は何をそんなに焦っているのか……σ(^_^;)?  今…
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