(133)リトルレディ
~切り裂きジャック目線~
獣人の国に来て、次々とレディたちを美しい作品にしてきました。
ですが、そのすべてが本当の赤の美しさを引き出すことができませんでした。
ああ、何故なのでしょう?
他の国もそうですが、皆健康的な肌ばかりで真っ白な肌が一人もいません。
健康的な肌は、赤色を美しくは見せません。
そんなとき、【彼】が教えてくれた少女のことを思い出しました。
黒髪の白い肌。
ああ、まさに赤い色が似合う色合いでしょう。
本当は獣人の女性で作品を作ろうと思っていたのですが、それはやめましょう。
だって、せっかく最高の材料を見つけたのですから。
そう思って捕まえようと思ったのに、あの糞餓鬼に邪魔されて目を離してしまい少女に反撃されてしまいました。
ああ、初めてですねぇ。
反撃されるのは。
今までのレディたちも、あの女も、被害者面して逃げていきます。
男だという理由で、あのような妄言を信じられるとは思いませんでしたが…………それでも真っ赤にしてしまえばもう口を開けませんよね。
赤くなりより美しくなったので、汚らわしい性根も綺麗に隠せたでしょうし。
ああ……ですがあの少女は違いましたね。
いまだ、ドキドキとしている胸を抑える。
「ああ…………なんて心地よいのでしょう」
この胸の鼓動も。
熱を帯びる頬の感触も。
この苛立ちも。
すべて初めて感じた物です。
ああ、なんて甘く苦い物なのでしょう。
それと同時に、少女を【彼】に渡したくなりましたね。
もともと、【彼】はあの騎士団長に対する嫌がらせとして少女を殺そうとしたようですけど。
まあ、しょうがないですよねぇ。
あの何を考えているかわからない片割れはともかく、【彼】はあの騎士団長のことを心底嫌い憎んでいるようですし。
でも、少女のことを知って【彼】は気に入ったようですね。
…………なんというか単純ですけど、まあしょうがないですね。
我々の立場のような存在にとって、生まれなどを関係なく普通に接する存在はとても心地よい存在です。
なおかつその保護者があの騎士団長では、【彼】にとっては非常に腹立たしいでしょうねぇ。
「…………ああ、いいことを思いつきました」
攫ってしまいましょうか。彼女の個有スキルはまだ詳細はわかりませんが、たぶん補助系のスキルでしょう。
それならば、十分裏の世界でも使える。
【彼】と取り合うのは面倒ですし、少女も一回会ったばかりの男よりはまだ二回目の男の方がいいでしょう。
「ふふ…………そうなれば、すぐに提案しましょうか。…………では、また会いましょうねリトルレディ」
ああ、でも。
そう思いながら歩き出す。
あの邪魔な糞餓鬼は腹立たしいので殺してしまいましょう。
あの様子からして見習いでしょうし、物をぶつけられたのは非常に不愉快ですからね。
次回予告:本部に戻った紗彩たち。
紗彩「自分の脚力の成長を物凄く実感できました」




