(132)逃亡
~紗彩目線~
「サーヤ!!」
聞こえてくるジャックさんの焦った声。
それと同時に首にかかる息苦しさ。
遠い地面。
「ねぇ、リトルレディ。あなたは、真っ赤になったらどれほど美しくなるのでしょうね?」
私の服のえりを掴んで私を持ち上げている切り裂きジャックは、まるで子供が欲しい玩具を懇願するような楽しげな声で言う。
正直に言えば、それどころではない。
切り裂きジャックの身長はかなり高いせいかすごく体が不安定だし、地味に首がしまっていて息苦しい。
どうする?
バックの中から道具を出すこともできるけど、それをしている間に攻撃される可能性もあるし。
爆散札なら何枚かズボンのポケットに入っているけど、結界石を見てしまった以上おとなしくはらせてくれるとは思えない。
さすがに、これを奪われたら今すぐに行える攻撃方法がなくなってしまう。
「グッ!?」
そう思っていると、バコンッという何かが当たる音と共に切り裂きジャックの腕が揺れた。
なんだと思っていれば、切り裂きジャックが仮面の上から顔を抑えている。
「この…………糞餓鬼がっ!!」
切り裂きジャックが、苛立ちを含んだ冷たい声でジャックさんの方を睨んでいる。
ジャックさんの足元には、へこんだボールがコロコロと転がっている。
…………あのボールを蹴ったのか。
そう思っていると、切り裂きジャックの意識がジャックさんの方に向いていることに気づいた。
今なら、いける!!
そう思ったと同時に、私はすぐさま爆散札をポケットから取り出した。
「お返しです!!」
「!?」
赤い文字が描かれた紙を切り裂きジャックの仮面に押し付ければ、切り裂きジャックは驚いたのか私のことを離した。
私が床に落ちて尻餅をつくと同時に、バンッという音が頭上に響き熱い熱風を感じる。
元の世界でならきっとこの瞬間火薬の臭いがするんだろうけど、爆散札は火薬の臭いはしない。
ただ、攻撃対象以外に対しては少し熱いと感じる熱風が起こるだけだ。
まあ、攻撃対象に対してはかなりの強い攻撃だけど。
そんな爆散札の爆撃を間近で食らったためか、切り裂きジャックは倒れることはなかったけどふらついている。
…………あれ、結構攻撃力は高いはずなのにふらつくだけか。
…………やっぱり、もう少し攻撃力を高めた方がいいかな?そ
う思いながら、女性をお姫様抱っこで抱き上げているジャックさんに続いて店を出た。
「ふふふ…………あははっあはははははは!!!!」
店の中から、そんな大きな笑い声が聞こえてきた。
…………怖っ。
次回予告:切り裂きジャック目線の話
そこで出てくる【彼】の存在とは…………?




