(124)傷跡
~ジョゼフ目線~
【切り裂きジャック】
最近、他国を騒がせている指名手配されている連続殺人鬼。
級は、S級。
正体どころか、顔も種族も全くわかっていない。
わかっているのは、狙いが女性である事と攻撃方法のみ。
サーヤ君に伝えた理由は、彼女の性別が女であるからだ。
ノーヴァ君が言った通り、被害は大人だけでなく子供にも及んでいる。
何より、最近では獣人の国でも被害が報告されている。
ということは、【切り裂きジャック】はこの国に来たということだ。
今までの奴の手口からして、一つ事件が起こればしばらくの間はその地域に集中する。
ある意味、被害者に全く共通点のない【霧夜の民】よりは厄介ではない敵だ。
だが、事件の危険度はS級になっている通り非常に高い。
騎士団に所属している以上、女性である彼女が狙われたり遭遇する可能性は非常に高いだろう。
騎士団に所属している、もしくは身内がいると言うだけで犯罪者が目を付けられやすい。
まあ、主な理由は逆恨みだが。
それでも、用心に越したことはない。
ただ、不可解な点もある。
【切り裂きジャック】に襲われ運よく重傷を負ったが生き残った女性の話では、【切り裂きジャック】に襲われた時霧が発生していたらしい。
でも、どんなに調べても女性のいた土地では霧は発生していなかった。
だが、女性の状態からしても嘘を言っているようではなかったらしい。
ということは、何らかの原因で霧が突如『女性の周りだけ』に発生したということだろう。
各国の騎士団との話し合いでは、その霧は【切り裂きジャック】の個有スキルに関係している物でないかと言われているが…………実際のところ真実は闇の中だ。
何分、生き残っている被害者が非常に少ない。
被害者の数が数十になっているところに対して生き残りは三人。
全員、防御に特化した個有スキルを有していたことで生き残った。
竜人の国で被害が出ていないのは、彼らもまた防御力に特化した種族だからだろう。
意識の状態から信憑性は非常に低いが、【切り裂きジャック】は高身長の男であり女性のことを「レディ」と呼んでいるということ。
…………何が、「レディ」だ。
何の罪もない女性を傷つけ殺し、生き残った被害者に対しても恐怖心を受け付け、被害者の遺族には消えない傷跡をつけた。
絶対に許さない。
何がなんでも、絶対に捕まえなければ。
…………世の中、本当に物騒だ。
彼女は、最近少しだけ笑うようになった。
ほんの少しだけですぐに無表情になってしまうが、それでもかなりの成長だ。
あの本部の侵入事件の時も、彼女はとてもいい働きをした。
それは結果的には悪い方向に進んでしまったが、それでも彼女がどう思っているのかはよく理解できた。
助けたいと思うのは良いことだ。
彼女は、自分の状況もしっかりと理解していた。
だからこそ、彼女の行動を利用した犯罪者は許しがたい。
いまだ、セレス君に扮した犯罪者一行の情報は見つからないが…………彼女が再び利用されないよう私達もしっかりと警戒しなければ。
次回予告:レオンと共同開発をすることになった紗彩
そこで彼女は、個有スキル使用時の自分の変化に気づかされる
紗彩「個有スキルなんてものがある時点で中二病感があるのに、なんだかより中二病感が増してしまったような」




