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(107)城の専属技師

~紗彩目線~



 モフンモフン



「大丈夫、サーヤ?」

「…………」



 シヴァさんよりも少し短い茶色の毛に埋もれていれば、セレスさんから心配した声音で話しかけられた。


 私はそれに答えず、ずっと毛皮の海の中に顔をうずめていた。





 最終的に、侵入者改め暗殺者は異空間の一部の怪異たちによって拘束された。

 空間の主である彼を拘束したことで、私達は無事に元の空間に戻ることができた。


 まあ怪異に周りを囲まれてよほど怖かったのか、シヴァさんたちに引き渡すころには暗殺者の顔は涙や鼻水など穴という穴から垂れ流した体液でベチョベチョになっていた。


 うん、同情はするけど自業自得だ。

 一番かわいそうなのは、怪異たちだし。


 そしてシヴァさん曰く、あの暗殺者たちはレオンさんの命を狙っていたようだった。

 動機はまだ不明らしいけれど。



 とりあえず私はどうすればいいのかと思っていれば、セレスさんが獣の姿のまま帰ってきた。

 セレスさんの獣の姿はシヴァさんほどは大きくなく、元の世界の馬ほどの大きさのハイエナだった。


 どうやら本部の周りを調べて、暗殺者がどこからやって来たのかを調べていたらしい。


 そして私はというと精神的な疲れなのか、気づけばセレスさんの毛皮の海に飛び込んでいた。

 セレスさんは、マットを敷いた床に獣姿のまま座っていたのもあるけど。


 シヴァさんほど毛が長くはないからか、モフッというよりはフワッとしている。

 例えるのなら、コートとかについているファーの毛を少し硬くしたような感触だ。


 それと同時にセレスさんの体温もあって、非常に落ち着く。



「ええと、サーヤ? 大丈夫かしら?」

「とてもモフモフです。癒されます」

「…………お疲れ様」



 セレスさんに声をかけられ少し落ち着いたから顔をあげれば、優しい瞳をしたセレスさんがいた。


 まあ、ハイエナの姿だから表情はそんなに変わってはいないんだけど。



「大丈夫か、サーヤ」



 そう思っていると後ろからシヴァさんの声が聞こえてきて振り向けば、そこには疲れ切った表情を浮かべたシヴァさんが立っていた。


 確か、シヴァさんは第一執務室でレオンさんとオズワルドさんから異空間で起こったことについて話を聞いていたはずだ。

 私達がいる第二執務室に来ているということは、話を聞くことが終わったのだろう。



「精神的に疲れました」

「何があったか聞いた。…………兄弟子たちがすまない」

「いえ、たぶん私だけの場合は脱出方法すらわからなかったので助かりましたが」

「そうか…………いつまで埋まっているんだ?」



 思わず本音で私が答えれば、シヴァさんに戸惑ったような声音で言われた。


 いつまで?

 確かにいつまでも毛の海の中にいるのは心地良いけど、さすがにセレスさんに迷惑だ。


 そう思いながら離れれば、セレスさんが獣の姿から人型に戻った。


 …………ものすごくモフモフだった。

 人間にはなんでモフモフがないんだろう?


 物足りなさを感じながらもそう思っていると、なぜかシヴァさんに抱き上げられて第一執務室に連れて行かれた。


 第一執務室の中にはテーブルを挟んで、右側のソファにアルさん・ジョゼフさん・ノーヴァさんが、左側のソファにはオズワルドさんとレオンさんが座って紅茶を飲んでいた。



「よっ」

「呼んできましたが、今度は何ですか? サーヤも疲れているので早めにお願いします」

「いや、すぐに終わるから問題ないぞ」



 片手をあげて微笑むレオンさんに、シヴァさんが私を下ろしながら言う。


 いや、シヴァさんよ。

 本当に思うんだけど、兄弟子だからって王族に対してそんな扱いで本当に大丈夫なんだろうか?


 たぶんレオンさんとオズワルドさんは気にしないだろうけど、彼ら以外の周囲の獣人とか。

 「不敬だ、首を差し出せ!」的なことにならない?


 そう思っていると、レオンさんが私の目の前まで来てしゃがみこんで目を合わせた。



「なあ、サーヤ。俺達の城に来ないか?」

「え?」

「は?」

「おや」



 レオンさんの言葉に、私・シヴァさん・アルさんは驚きの声をあげてしまった。


 いや、何言ってんのこの人。


 ちなみにオズワルドさんはレオンさんの後ろで呆れた表情を浮かべているし、ジョゼフさんは仕方がなさそうな表情を浮かべている。

 ノーヴァさんはといえば、興味がないのか書類を見ている。

 私の後ろにいるシヴァさんは頭を抱え、アルさんとセレスさんは何かに気づいたのか笑みを浮かべている。



「なるほどね。なんとなく、予想はしていたよ」

「ははは、ジョゼフ殿にはバレていたか」

「私も医師だからね」



 ニコニコと笑い合っているジョゼフさんとレオンさん。


 え、ちょっと待って?

 もしかして、状況を理解していないのって私だけ?




 訳が分からず困惑していると、レオンさんがニッコリと明るい笑顔を浮かべながらなんでもないように言った。





「まあ、あれだ。サーヤ、城の専属技師にならないか?」

「え?」








次回予告:ジョゼフ目線で語られる二人の会話





劇場:[4]~キャラの中でのレオンに対する印象~



紗彩「変な人。性癖なのか、ただ単に変なのかよくわからない」


シヴァ「悪い人ではないが、サーヤの教育に悪すぎる」


アル「団長に対して悪意がないので別にどうとも思いません」


セレス「アタシのことを変な目で見ないから、一緒にいて楽なタイプね」


ノーヴァ「どうでもいい」


ジョゼフ「私にまで『殿』をつけなくてもいいと思うんだけどね」


ラーグ「めんどくさい」


ジャック「良い人だな!!」


オズワルド「とりあえず、あの自由な部分だけは直してほしいですね。まあレオン様の敵は、煮るなり斬るなり焼くなりすればいいんでストレス発散はできますけど」

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